11/12/02
胎児の権利能力(民法9)2
長い間、寄り道をしましたが、また、胎児の権利能力の問題に戻ります。胎児は生きて生まれる事を条件に、既に生まれたものとみなされる条文が有る事を以前に書きましたが、この条文の解釈が分かれているので、説明の前提として、『条件』の説明をして来たのです。
条文の引用は、見るだけで嫌になる人が多いと思いますが、かなり専門的になって来ましたので、正確を期する為に、この辺で条文をそのまま引用してみましょう。
『第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。』『A前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。』というものです。
さあ、これはどう言う意味でしょうか?
『そんな事文字に書いてあるとおりでいいんじゃないの!何が問題なの?』という人がこのコラムの読者の大半と思いますが、意外とこの条文が難解なので、私のように司法試験勉強から30年以上も経過した者でもおぼえているのですよ。例えば、初めての子供が妊娠中(出産予定日まで3ヶ月としましょう)の夫婦で、資産家の夫が死亡した場合を考えて下さい。これを、遡及効の有る停止条件と解釈すると、どうなるでしょう?生まれるまで何の権利もなく、生まれて初めて、遡って相続権が発生するという解釈になるでしょう。
現在の民法の相続分では、出産を待たずに、妻が3分の2、夫の親が3分の1の割り合いで相続してしまう事になります。
そうして、3か月後に出産したときに、生まれた子供は、自分の相続分を取り戻す権利が発生します。
夫の親は全部返す事になり、妻すなわち母親は、子供と2分の1づつの相続となります。
もし、長子単独相続制の時代ですと、妻には全く相続権がない事になりますので夫の親(が死亡の場合夫の弟)が全部相続してしまい、出産後に生まれた長男が全部取り戻す事になりますね。
結局同じじゃないの!何の為にそんな義論してるの?という声が聞こえて来そうですが、実際は大きな差が生じるので議論している訳です。話が長くなりますので、次回に続けます。
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