10/20/03
民間を豊かにするには(法人税法と商法)4
以下に紹介するように、中小企業は別として法人に対する税率は、長いあいだ、およそ40%前後で推移していますが、(法人税法では35%前後で小刻み改正、地方税法の法人事業税は、5%で殆ど変わらず)例えば、ある年に300億円の売上で10億円の利益が出た場合を考えてみて下さい。
法人税法
第1款 税 率
(各事業年度の所得に対する法人税の税率)
第66条 内国法人である普通法人又は人格のない社団等に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、各事業年度の所得の金額に100分の34.5の税率を乗じて計算した金額とする。
《改正》平10法24
2 前項の場合において、普通法人のうち各事業年度終了の時において資本の金額若しくは出資金額が1億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社を除く。)又は人格のない社団等の各事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額については、同項の規定にかかわらず、100分の25の税率による。
《改正》平10法24
その年に10億の利益から4億円の税金を納めて、残り6億円からの10%以上の利益準備金を積立てることは許されますが、それ以上は配当してしまわなければなりません。(損金勘定としての各種引当金は、利益計算で既に計算されています。)
商法を紹介しましょう。
第288条 会社ハ資本準備金ノ額ト併セテ其ノ資本ノ4分ノ1ニ達スル迄ハ毎決算期ニ利益ノ処分トシテ支出スル金額ノ10分ノ1以上ヲ、第293条ノ5第1項ノ金銭ノ分配ヲ為ス毎ニ其ノ分配額ノ10分ノ1ヲ利益準備金トシテ積立ツルコトヲ要ス
《改正》平13法079
第288条ノ2 左ニ掲グル金額ハ之ヲ資本準備金トシテ積立ツルコトヲ要ス
- 株式ノ発行価額中資本ニ組入レザル額
- 株式交換ヲ為シタル場合ニ於テ第357条ニ規定スル資本増加ノ限度額ガ完全親会社ノ増加シタル資本ノ額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額
- 項以下略
第290条 利益ノ配当ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ左ノ金額ヲ控除シタル額ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得
- 資本ノ額
- 資本準備金及利益準備金ノ合計額
- 其ノ決算期ニ積立ツルコトヲ要スル利益準備金ノ額
- 其ノ他法務省令ニ定ムル額
- 前項ノ規定ニ違反シテ配当ヲ為シタルトキハ会社ノ債権者ハ之ヲ返還セシムルコトヲ得
もしも、翌年7億円の赤字になったら、どうしましょう?
前年度利益を、1円も使わずに利益準備金として保有していても、支払いが出来なくなりますね。
実際は、株主配当をしなければ、株価が暴落してしまいますので、利益が100%残っていることは有り得ません。
そのうえ、利益と言うのは、期末の在庫や資産の評価が、資本勘定より超過している分を利益と計算しているだけであって、同額の現金があると言う意味ではありません。
そこで、黒字決算の場合でも、金融機関から借金をしないと納付すべき税金さえ払えず、配当も、日常業務上の債務支払いも出来ないことが多いのです。
まして、赤字になると大変です。
ですから、翌年の赤字が7億でなく1億でも支払いに困るのが普通です。
最優良企業といわれるトヨタの決算書を以下に紹介しますが、同社でも、3期前を見ると、売り上げ金の数%前後しか純利益を出していませんし、(2003年で6%弱)資本金も売上高の3%にも足りません。
比較の為に、最近元気のない富士通の決算も、紹介しておきましょう。
富士通も、売上高に対する当期利益の比率は2%程度ですし、資本金は4%程度です。つまり超優良のトヨタの例では、資本金に対し、30倍以上の売上で売上金の3%前後の利益を出していれば、超優良企業というのです。
そして富士通の例では、資本金の25倍程度の売上で、2%程度しか利益を出せないのが原因で、元気ないと言われているのが分ります。
このように、売上の3%前後が利益でそのうち4割が税金ですから、自由になるのは売上金の1,8%しかないことになります。
そこから配当、利益準備金に使われるのですから、利益準備金(再投資も利益準備金勘定に計算出来ます。)として積み立てできるのは、売上金の1%もあればいい方になります。
商売の世界では、売上の増減が数%どころか、悪くすると1割程度変動するのは、珍しくないのです。
売上の1%前後の積み立てでは、10年積んでも(連続黒字でも)変動対策には不十分です。
まして、前記のように、利益から再投資するのが普通ですので、利益準備金と言っても現金では残っていませんから、殆どの会社が、借金しなければならなくなっているのです。
------------------------------------------------------------------------トヨタ自動車(ヤフーファイナンスによる)
![]()
富士通
------------------------------------------------------------------------
![]()
------------------------------------------------------------------------
【ご注意】
この情報は投資判断の参考としての情報を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社および情報提供元は一切責任を負いかねます。
------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------------
以上から、5年、10年単位で収支を計算すれば黒字の会社でも、単年度で税金を納めなければならないことから、あっけなく倒産したり、借金漬けになるのが今の税制です。
これを免れるために、土地の値上がりが続いていた時期には、土地含み益経営が企業にとって必須条件になっていたのです。
税制が、土地の値上がり神話を助長していた側面があったとも言えるでしょう。
この含み益経済は、戦前または、戦後早い時期から存在する企業が、時価100万円の土地を戦前に5円で取得していた場合、簿価=取得価格ですから、10万坪あっても簿価は50万円にしかならないのです。
これに対して、新興企業が坪100万円で土地を取得していると含み益がありません。
新興企業は、上記のように損益の変化をまともに受けてしまうのに対し、老舗は有利であったことが分るでしょう。
含み益経済では、古い企業は10年続けて赤字でも、少し土地を売ればやっていけますし、土地担保で融資も受けられますので、その分退場が遅れます。
その逆に老舗よりも事業効率の良い新興企業が、創業以来10年連続して儲かっていても、11年目に赤字になると、担保になる土地を持っていませんので、融資も簡単に受けられずにすぐ行き詰まるのですから、産業界への新規参入(新陳代謝)を抑止する効果をもたらしていました。
このように10年連続黒字でも、ひとたび赤字になるとすぐ窒息するようでは、新規参入者で成功する人は、稀になります。
こう言う事例を見ていると、一定の能力があれば、「大企業に就職した方が良い」と言う風潮となり、、前向きの独立ではなく、何らかの失敗などで企業社会・公務員社会から弾き飛ばされた人が、食べて行くために仕方なく起業している場合が、多く見かけられるようになりました。
高校へ行くのもかったるいし、親が、町工場、工務店、ラ-メン屋、ペンキ屋をしてるから、手伝ってるとか組織から弾き飛ばされた人ばかりが、新規参入者や、中小企業の経営者では、社会が活性化しませんよ。
含み益経済が続き、不公正な競争社会であったことが、現在の経済低迷の一因にもなっていると思います。
話が横に行ってしまいますので、含み益の問題は、またの機会にしてましょう。
関連ページリンク
稲垣法律事務所コラム内:社会の高度化、教育に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:税制、税金に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:消費に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:ゆとりに関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:文化に関するコラム
©2002,
2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design
/ Maintained by Pear Computing LLC
