10/05/03

教育改革・・・・・明治政府と学制改革(私立教育機関)10

9月25日の「教育改革・・・・・・明治維新と学制改革(大学規則と近代化) 3」のコラムで紹介しましたが、明治3年の「大学規則」では、最高学府として、日本に一つだけ大学を設置することが定められ、その後「明治維新と学制改革(学制と教育令) 5」で紹介した「学制」「教育令」でも、この思想は、ずっと受け継がれていました。
その唯一の「大学」すなわち東京帝国大学が、明治19年に出来てしまいますと、各私立、または、各藩校は、その下位の高校としての格付けにならざるを得ません。
皆さんの各郷里の由緒ある藩校が、〇○高校として地方名門高校になっている例を、ご存知でしょう。
こういう経緯から、地方名門高校が生まれたのです。
その後、私立学校令(明治32年)によって、私立学校が地方長官の監督を受け、その認可で設立出来ることになりました。
それまでは、これまで紹介して来ましたように「監督できる」と言う条文ばかりが次々と出来ていましたが、公的な設立手続きが、法律ではっきりしていなかったのです。

「私立学校令(明治三十二年八月三日勅令第三百五十九号)
第一条 私立学校ハ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外地方長官ノ監督ニ属ス
第二条 私立学校ヲ設立セントスル者ハ監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ私立学校ノ廃止及設立者ノ変更ハ監督官庁ニ開申スヘシ 」

この私立学校令が出来るまでは、自然発生的に慶応義塾や、その他、私塾はいっぱいあったのですが、公的にはなんの卒業資格も与えられない、まさに実力だけの世界に生きていたのです。
 これまで、紹介しています、江戸時代の緒方洪庵の適塾、測量・天文学の大阪の麻田剛立や、吉田松陰の松下村塾・剣術の千葉道場などは、実力で認められて、歴史に残っているのです。(今でも茶道や、華道、スイミングクラブなどはそうですね)
同じように、明治になってから出来た私塾も、そういう感覚で発展してきました。(講道館柔道などもその一つでしょう)
私立学校は、この学校令で設立すれば、存在を認められる代わりに、国内唯一と規定された最高学府である大学以下の格式にならざるを得ません。
江戸時代には、官学である昌平坂学問所よりも、民間の塾の方が実際に上を行っていたことは周知のとおりです。
測量、天文術でも官学が役に立たないために、大阪の私塾から抜擢されたことは、伊能忠敬の事跡で述べました。
また、幕末に活躍した人の殆どは、私塾出身者であることも、皆さんご承知のとおりです。
官学は、権力の力で最初は、最優秀者を集めることが出来るのですが、時代を経るに従って、形式主義に陥り、次第に輝きをなくし、私学にその地位を奪われていく宿命があるようです。
このように、幕末から明治初年には、私塾は、いろんな分野で公教育を凌いでいましたが、明治政府は、政府の権威を維持するための方策として先ず、最高学府は、中央に一つだけ政府が設立する大学であると、大学規則で定めたのです。
そして、帝国大学(南校と東校)の充実をまって、実際に最高学府としての東京帝国大学を設立したことは、前回のコラムで紹介しました。
こうして、立場を失って、よろめいている私塾に対して、10数年経過してこの私立学校令で、ようやく私立学校として公認することになったのです。
すごい長期的な計画ですよね。
このとき私立は、「自分たちは、これまでの実績からも、大学と対等の格式をほしい、そうでないならば、公認してもらわないほうがましだ。」位の気概を持つべきだったのでしょうか?
しかし、前記のとおり、明治初年ころに比べて、私塾は力を失っていたように私には思えます。
この弱みが、「公認さえ受けられればいい」という弱い姿勢となり、自由闊達な議論を出来る筈の私立が、政府からの教育内容について監督を受けるようになった受難の始まりではないでしょうか。
私に言わせれば、外国人教師や、留学生だけで人を集めても、自分で人材育成能力のない官学は、時とともに駄目になる(権威盲従主義ですから、どうしても訓古学に陥りやすいのです。)のは歴史の教えるところですから、一時の凋落に落胆せず、このときがんばって欲しかったと思います。




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