10/10/02

裁判の仕組み 8(弁論主義)

いよいよ裁判の中身に入って行きましょう。
原告が、お金を貸したので返して欲しいと言う裁判を、申し立てた場合について考えてみましょう。
被告が原告の要求している金額全額を返しますと言えば、裁判はそれでおしまいになる事は、前回迄のコラムで説明したとおりです。
では、『お金を借りたのは認めるが、金額が違うとか全く借りた事がない』という主張を被告がしたらどうなるでしょうか?
従来の要件事実一点張りの考え方ですと、この時点で、直ちに証拠調べという事になりますが、そう言う極端な進行は実際にはなくて、裁判所は、原告に対して、貸し付けた前後の状況の主張を求め、(求められなくとも、原告は経過を具体的に主張するのが普通です。)被告は、これについてその時に出会った事は認めるが、お金の受け渡しはなかった、または半分しか貸してくれなかった等の状況説明の主張をします。
このような双方の主張が繰返された結果、最終的に相反する点が絞られると、その時点で弁論手続きを打ち切って、証人調べに入ります。
こういう単純な進行ではなくて、『原告のいうとおり、借りた事は認めるが、既に全額返した』といったら、どうなるでしょう?
裁判の争点は、返したかどうかに移ります。貸したかどうかを調べる必要がないばかりか、調べる事が許されません。
当たり前でしょうと言ってしまえばそうですが、こういう仕組みを『弁論主義』と言って、民事訴訟特有の仕組みです。
家事審判や刑事事件では、公益性が強いので、当事者が良いと言っていても職権で探知する仕組みとなっています。(職権探知主義)
但し、実際には、当事者が争わない事を、裁判所が知るチャンス等は滅多に有りませんので、実際上の運用はそれほど変わりませんが、職権探知主義の手続きでは、そう言う事が万一あった場合、裁判所は当事者の主張に拘束されないと言う事と、ちょっとした注意で、分かった筈なのに気付かなかったと言う時に、裁判所の責任問題になると言う事が違いと言えるでしょう。




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