09/28/06

証拠法則と事実認定の重要性8(事実認定の合理化1・・・略式の場合)

国民は素直です(格好つける必要がないと言えるでしょう)から、そう言いますが、実は裁判官も本当は自信がないのは同じ筈です。
「自由心証に任せるよ」と言われても、事実認定に関する科学的な研究がないのですから、これを前提とした科学的な訓練もありえない筈です。
科学的な訓練もなくて何となく(と言っては失礼かな?)中立と言う資格だけで、事実認定しているだけですから、事実認定に関しては、職業裁判官と素人の間には差がないと言う意見が多いのは、仕方がないでしょう。
この事実認定能力には、素人も職業裁判官も大差ないと言う議論が下敷きになって、陪審制、裁判員制度ができていることを、想起してもいいでしょう。
野球でも囲碁でも、相撲でも、プロとアマチュァの実力差は、比較にならないほど大きいのが普通です。
ましてや、裁判員法で駆り出されて来る人は、アマチュアなどと言える程訓練を積んだものではなく、ずぶの素人です。
裁判の中核をなす事実認定能力が、プロとズブの素人で大差ないと言われて黙っているしかなく、しかもこれに対する反論を聞かないのでは、裁判官はプロとはいえないことを認めているようなものでしょう。
現状では、裁判所が素人と違うのは、事実認定能力の差ではなく、単に量刑基準と言う情報を(公表せずに、)独占しているだけのことでは、ないでしょうか?
量刑だけならば、基準表を作成して公表すれば、素人でもかなり似た判断を出来るのです。
裁判で最も肝腎の事実認定分野でプロ性を発揮できないで、事実認定の結果である量刑基準だけ秘密にして固守して、特権を維持しているのです。
量刑に関しては、社会の発展に連れて公事方御定書のような、事例集の編纂が発達して来るのですが、これでさえ秘密されていたことはそのコラムで紹介しましたが、今も同じで公開されていません。
今でも事実認定ルールがはっきりしないことと、量刑基準が公表されていないことが相俟って、刑事裁判では、事実認定と量刑が混然となっていることから、量刑判断が重要な印象を持っているだけです。
例えば、略式請求事件の罰金刑などは、事実が画一的な交通事故などが対象で、超過スピードが何キロから何キロまで、あるいは、全治何ヶ月から何ヶ月までの傷害では罰金何万円と言う一種の量刑基準表があって、(一回目の違反か2回目の違反かの修正もあります)裁判官と言ってもそれを流れ作業的に当てはめて、罰金額を決めて行くだけです。
略式手続に付いては、07/23/06「略式手続と即決裁判手続の違い1(刑事訴訟法47)」前後で、紹介しましたが、被告人が事実関係を認めている場合の手続ですから、罰金の前提になる事実についての認定は不要です。
このように違法事実が一義的・類刑的に決まっている場合には、裁判官の仕事と言っても、工場で制御盤を睨んでいる工員さんとどこが違うの?と言うことになる事が分かるでしょう。
機械的な仕事で、略式手続はつまらないことから、こうした単純作業は簡易裁判所判事の仕事になっているのです。
この秋から始まる即決裁判手続は、地裁判事にもこうした単純な作業をさせようとするものです。



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