09/06/03

取締役1(商法18)

理事に対して「取締」と言う単語は、江戸時代にも多用されていましたので、江戸時代からの継続している商業組織を、近代的に衣替えして法文化した会社法(商法)では、取締役の用語をそのまま使いました。
銀行で多用されていた、頭取と言う名称もこの範疇に入るでしょう。
取締と言う用語も、理事同様に上位者から一定の事項を取り締まる権限を、ゆだねられた印象の強い言葉です。
商法では、会社のオーナーは、株主であって、取締役はそれを預かって運用する立場の人です。
「08/08/03 会社の乗っ取りと商業登記法1」で紹介しましたが、もう一度商法を見ておきましょう。

商法

第254条 取締役ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任ス

  1. 会社ハ定款ヲ以テスルモ取締役ガ株主タルコトヲ要スベキ旨ヲ定ムルコトヲ得ズ
  2. 会社ト取締役トノ間ノ関係ハ委任ニ関スル規定ニ従フ」

第254条ノ3 取締役ハ法令及定款ノ定並ニ総会ノ決議ヲ遵守シ会社ノ為忠実ニ其ノ職務ヲ遂行スル」

取締役は、オーナーの集団である総会で選任され、会社との契約関係は、雇用ではなく委任契約であるとされています。
就任するとすぐ次の条文で、法令に従い(当たり前です)定款と個々の総会決議に従わねばならないばかりでなく、積極的に会社のための忠実義務まで規定されています。
従来の下僕たる番頭同様の、忠実義務の維持に熱心な様子が見て取れますね。
ただ、番頭は、相当の理由がない限り、いきなり解雇されることはなかったのですが、取締役になると、委任ですから、なんらの理由がなくともいつでも解任できることになっていて、その地位はきわめて不安定です。

商法を見ましょう。

第二百五十七条 取締役ハ何時ニテモ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得 但シ任期ノ定アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ其ノ任期ノ満了前ニ之ヲ解任シタルトキハ其ノ取締役ハ会社ニ対シ解任ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得」

この条文は、実際にそのように運用されており、労働者に対する解雇権乱用の法理のような保護はありません。
任期中でも、正当な事由がなくて解任できることが、257条に明記されているのですから、解任された取締役は、解任が不当であると訴えることが出来ないのです。
法的に何の保護もないことになります。
任期中に正当な事由がなくて解任された場合、損害賠償請求できるといっても、任期は最長期でも2年しか認められていませんので、殆ど役に立ちません。

商法

第二百五十六条 取締役ノ任期ハ二年ヲ超ユルコトヲ得ズ

  1. 最初ノ取締役ノ任期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ一年ヲ超ユルコトヲ得ズ
  2. 前二項ノ規定ハ定款ヲ以テ任期中ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ニ至ル迄其ノ任期ヲ伸長スルコトヲ妨ゲズ」

もちろん労働基準法の適用はありませんよ。
プロ野球の選手同様、一人前のプロとしての委任契約を前提とするからです。
雇用契約でなく、委任契約であることは、254条で見たとおりですが、契約の種類が違うことによってこのような差が出てきます。




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