09/03/02

交通事故の損害額について 4(刑事事件と保険会社の役割 1)

話は変わりますが、私が担当した刑事事件で、刑事被告人=加害者・・・雇傭会社では無制限の保険に加入していました。
死亡事故で、加害者の側では、無制限なのだから保険会社が100%面倒見てくれる筈、と言う思い込みから、保険会社任せにしていて、いよいよ刑事事件が始まりました。
私は国選弁護で、裁判まじかに選任されましたので、事情を聞いてみますと、『相手が保険会社の提案をのまない為に、全く示談になりそうもない、悪い被害者にあたった』と言う説明です。
相手かいくら要求しているのかを聞いてみると、弁護士規準で行けば穏当な所です。
保険会社の規準では前記の通り、約半額ですから、弁護士規準を知っている被害者が示談に応じるはずがありません。
保険会社にしてみれば、示談が出来てお客が刑務所にいかない方が良い、とは思っても、他方で出来る事なら、支払いは少ない方がメリットである事も事実です。
加害者本人が交渉する時は、実刑で刑務所に行く事になるのかどうか微妙な時には、仮に相場より少しくらい多く払っても、示談したいと言う心理が働きますが、保険会社の人は、自分が刑務所に行く訳でもなく、会社も保険契約の義務を果たせば良いのであって、刑務所に行くかどうかについて責任がないのですから、そのインセンチブは、相場より高く払うどころか、少しでも安くしたい方向になります。
私は、加害者の会社の人に規準を説明して、『これでは何時迄待っても示談にならないし、相場のおよそ半額の提案では、加害者として誠意のある提案をしているとは、裁判所でも認められませんよ、』と言いましたところ『何の為に無制限の保険に加入しているかわからない』と、怒っていましたが、保険会社は刑事事件の弁護の為に役立つ義務迄はないので、(保険契約の履行が、結果的に刑事事件に良い結果をおよぼす事があるだけ、で契約者がそこ迄求める権利はありません。日常こういう種類の誤解が数多くあって無用のトラブルを招いていますので気を付けて欲しいものです。)。直ちに契約違反とは言えないでしょう。
最初に書きましたように、保険会社は加害者の代理人ではありませんので、自分の事は自分で守るしかないのです。
そこで私は、保険会社の人に、被害者は弁護士規準で来ているのだから、弁護士規準で示談して欲しいとお願いしましたが、相手が弁護士を頼んでくれたら、社内的に規準を変更出来るが、自分の一存では変えられないと言う事でした。
このとき、私は、『軽い受傷事故の時は、総額が2〜30万円で、差額も少しだから良いでしょうが、死亡事故になると、何千万の差だから殆どの人が示談に応じないのではないですか?』と質問した所、
『いやあ、100%近く保険の規準でOKしますよ、1000人か1万人に1人くらい弁護士さんを頼んだ時だけ弁護士規準に変更すれば良いのですから、この規準で困る事はありませんねえ』と言うので驚きました。




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