08/31/07
公証人法1
誤解のないように、もう少し説明しますと偽造ではないと言う確かさだけではなく、後述のとおり、公証人の資格は厳格ですから、内容的にも、法的に違法な文書ではないという信用もあるからです。(公証人法26条)
ただ、外形文言上違法な文書は作らないと言うだけであって、その内容実質には踏み込めませんから、実はそこが問題なのです。
たとえば、900万円しか借りてなくとも、当事者が1000万円の借用を前提とした公正証書作成を依頼してくれば、それをチェックできません。
以前は白紙委任状を利用して、債権者が好きな内容を書き込んで公証人に持ち込むのが普通でしたので、トラブルが絶えなかったのです。
私が弁護士になった以降10数年は、公正証書による強制執行に対して、借りた金額がまるで違うなどの理由で、執行停止の仮処分申請事件を随分とやりました。
これは、20年ほど前に白紙委任状を利用して、委嘱人の好きな内容で作成することが禁止されましたので、だいぶ是正されました。
しかし、金貸しがあらかじめ白紙で取っておいて、公証人に持ち込む前に勝手に書き込んできても公証人は、それを見破ることは不可能です。
要するに、債務者の代理人を金貸しの社員でも誰でも出来るところに問題があるのです。
また当事者の同一性のチェックについても、法律上は原則として面識のある人の文書しか作成できないのですが、実際には面識のない人の依頼が大多数で、例外とされる印鑑証明で面識に代用できるようになっているのです。(28条)
この法律が出来たころは、公正証書を作るような事柄に参加するのは、一定の資産家だけで、地域の公証人があらかじめ面識があることが前提だったのです。
争いが生じたときの証明には、第三者の立会いとその証言が重要ですが、明治のころには、どこの馬の骨でも証言すれば、裁判の勝ち負けが決まると言うのでは心もとなかったのでしょう。
そこで、人格のある公証人と言うものをあらかじめ選任しておいて、その人が証明すれば、(公証人・・・公の証明人です)裁判を経ないでも結果は同じ・・強制執行が出来るとしたものです。
政府の好む裁判回避制度の草分けです。
ところが、今では大衆社会で誰もが当事者になる時代ですから、面識のあるものだけと言うシステムに無理が生じているのです。
確かに、公証人は裁判所の元所長クラス、検事の場合は検事正クラスの退官後の就職先の定位置ですから、こう言う人が証明すれば裁判しても結果が同じことだと言えるかもしれません。
しかし、公証人の面前で、一定の書類を作ったと言う点の証明力はあるのですが、「面識」と言う重要な部分で、印鑑証明持参と言う形式に堕してしまうと、印鑑証明書と実印さえ持ってくれば、年齢が似かよっていれば替え玉でも見抜くことは出来ません。
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