08/30/07

契約とは?7(民法241)印鑑の偽造防止策

弁護士の仕事でも、勝つか負けるかだけでなく、キメ細かな交渉技術が必要である、負ける事件の方が難しいし、プロが必要であると、08/03/07「タフな言論人の育成4(単細胞の危険性)」で説明したことがあります。
今でも、刑事事件で
「悪いこととしたのは、間違いがないから弁護士など要らないだろう。」
という人が、今でも多いのです。
今でも、水戸黄門で象徴される勧善懲悪思想のテレビドラマが茶の間の主人公になりやすいのですが、単純思考の人が多いからでしょう。
このように、善悪2元論的発想で長年来たので、物事を約束するときには、細かい条件を決めて、相互チェックの結果、契約すると言う観念の発達もなく、つい最近まで何かあると一方的な「証文を取る」のが一般的でした。
企業や組織では、従業員や会員に何か落ち度があるとこのチャンスとばかりに、始末書を取るのが今でも好きですが、その先が書いていないのですから、同じ発想です。
証文も、結局は本人の意思を証明するためのものですが、強い方が一方的に「取る」だけのところに、両当事者による「意思の合致」が重要という近代法の本質に照明が当たっていなかったのです。
ちぎりと契約に戻しますと、契約の契は、契印と言う用例からも分かるように、少しずつずらして契印を押すのですが、最近では、これに加えて後日文書の真正を確認するために、約束文書を複数作って、これを相互に各自所持するのが原則です。
ところで、最近は、コンピューターの発達で、押印している印影の読み取りをしてそっくり同じ印影を作出するのが簡単な時代です。
文書に実印を押したのを相手に渡す・・文書2通を各自所持する現行形式は、偽造されるリスクがあって非常に危険です。
契印形式だけで、署名部分に押印しなければ、(契印にしか印を押さない)相手の持っている半分の方にはどういう文様か不明なので、これを偽造することは不可能ないし困難ですから、この方が安全です。
しかし、この場合、契約を変更したいほうが、自分の所持する片割れに押してある印影をもとにスキャナーで自分の所持している文書に相手が押した約半分の陰影を読み取って、その部分だけそっくりの印鑑を作り、変造した文書にその偽造印を押せば、どちらが正しいものだったか分からなくなります。
これを防ぐには、このときにこそ、公的登録している実印=印鑑証明の印と照合させて見ることにすれば、その偽造は出来なくなるのです。
この機能・・公けに証明する機能を重視したのが、公証人による公正証書作成の制度でしょう。
公正証書や内容証明郵便の場合、原本が公証人役場や郵便局の保管ですから、一方当事者が変造することが不可能なのです。
この「確かさ」の理由で、公正証書による支払い約束に執行受諾文言がつくと、判決がなくとも強制執行できることになっているのです。
 ただし、金銭支払い等の執行に限定されています。



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