08/27/07

契約申し込みと撤回6(民法234)

この用例をみると、撤回とは、一旦意思表示しても、その相手が、まだこれを受け入れるかどうかを表明していないうちに、自分の申し出でを撤回・・前言の翻しできる場合を予定しているのです。
この場合も、一旦表明した意思表示の遡及的失効・・申し込みがなかったことにする・・・を目指すものですが、まだ契約の成立に至らない途中ですから、これに向けた行動を中止できるというもので、 結果的に将来に向かって効力を停止・・あるいは無効にするだけの関係です。
契約申込みの撤回は、まだ契約が成立していない段階ですから、法律的には契約の遡及的失効を観念する余地がありませんが、自分の意思表示を根こそぎなくすという意味では、実質的遡及効を期待しているのです。
しかし、政治家でも普通人でも、一旦、部下に対してやめてほしいと言ってしまい、相手が辞表を出さないうちにその発言を撤回しても、(法的効力は別として)言ってしまったことは、取り返しが付かない政治的効果が生じるのです。
昔から「綸言汗の如し」というとおりです。
そうした、昔からの言葉の意味からすれば、撤回とは、撤回者にとっては、初めからなかったことにしたい行為の謂いでしょうが、社会的・実質的効力・・・言ってしまったことは取り返しがつかないものです。
そこで、撤回とは前言を翻す行為ですから、野党から国務大臣が国会発言の撤回を要求される変なことになっているのです。
撤回に追い込まれるのは、政治家にとって政治生命を左右する言葉・行為になるので、「撤回権」ではなくなっているのです。
しかし、法的効力に限っては、(効力未発生だから)将来に向けて効力をなくす一方的効果を意味する・・権利といえるのでしょう。
前回紹介した契約の申し込みと撤回の条文では、撤回という用語が頻繁に出ますが、相手に落ち度がなくとも自分の気が変わったいうだけで、自分の既にした意思表示を取り消す場合として使われています。
その代わり、撤回可能な時期だけが問題にされているのです。
取り消しするには、一定の地位や関係を証明しなければならないのですが、贈与の取り消しでは、何らの法定事由の発生を主張する必要もなく、問答無用でなかったことにできる点では、文語体当時の贈与の「取り消し」を口語体では、「撤回」に変えたのは、この意味では合っているのです。
ちなみに、皆さんのよく経験するホテル予約のキャンセルとか割賦販売のクーリング・オフは、殆どの場合、ここで言う撤回ではなく、既に成立した契約の解除または取り消しの場合が多いでしょう。
これは、未成年者保護同様に消費者保護のために新しく創設された現代的制度です。



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