08/22/07

取消と撤回1(民法220)と不当利得

贈与には、原則として契約解除原因がないとすれば、気に入らなくなっても、けんか状態になっても途中でやめられないのでは、無償行為の性質上困るので、未履行分に対してだけ撤回(取消)権を創設したものでしょう。
世の中には、無償のボランティアというものがあって、いやになったら、何らの理由がなくともやめられると思っている人が多いのと同じでしょう。
贈与の場合は、途中で取り消しても、取り消し前に履行してしまった分の効力に影響がないという特別な制度にしているのですから、不当利得として返せといえなくなります。
取り消しといっても、将来に向かっての履行拒絶権でしかないのです。
(このために、中途まで進んでいる場合の処理がややこしくなりますが、履行が終わったとは、どういうものかについて書く機会があれば、もう一度触れます。)
(家を引き渡したが、名義変更が終わっていない場合など・・・・既成事実の尊重だけ・・現状維持では、困ることもあるのです。)
ところで、ここまで取り消しとか撤回とか括弧書きなどであやふやに書いてきましたが、文語体民法の条文を口語体に直した4〜5年前まで文語体のときに「取り消し」だったのを口語体になったときに「撤回」と書き換えていることが分かったからです。
実はこのコラムの下書きは、4〜5年前の文語体のときに書いてあったものですが、この間にいろいろ連想ゲームみたいにいろんなテーマのコラムが挟まってしまい、贈与のコラムに戻るのに年月がかかっているうちに、口語体民法に変わっていたのです。
一般的な報道では、文語体を今風の口語体に変えて国民が読みやすくするだけで、本格的な法改正ではないということだったので、詳しく見ていなかったのですが、今回年数が経過しているので、見直してみると意外にも、旧条文の「取り消し」が「撤回」に変っていることが分かったからです。
それで、撤回(取り消し)などとややこしい書き方になっているのです。
民法の基本的な用語法から言えば、(次のコラムで紹介する民法121条参照)取り消しならば、遡及効・・・初めに遡って契約の効力がなかったことになるべきですが、贈与での取り消し(旧条文)は、既に履行の終わった分の取り返しが出来ないならば、「取り消し」というのは誤った用法・・・一貫しないことになります。
当事者間でも遡及効のない取り消しは、法学的に意味が不明瞭ですし,それに一方的に契約の効力を否定できる取り消しを出来るには、相手方保護のために取り消しできるだけの特定の事由がなければならないのが法原則です。
贈与の取り消しには、そういう法定事由が一切なく、贈与者が自由気ままに出来るのも特殊です。
契約をした以上は、守らねばならないのが近代法の大原則・・・社会秩序の基礎とも言うべき思想です。
これを表す言葉・・近代社会の特徴として「身分から契約へ」と言う有名な言葉を12/24/03「刑罰の種類6「公事方御定書4」(身分とは?1)」04/07/07「契約社会2(民法195)と消費者保護」その他のコラムで紹介してきました。



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