08/27/06

吟味筋5(「1通糺」と奉行の出座1)

吟味筋の認定手続から、話がまたずれましたので、08/19/「吟味筋4(事実認定と量刑手続の分離1)刑事訴訟法50」のコラムの続きです。
江戸時代の刑事手続に戻しましょう。
吟味筋の冒頭手続きでは、奉行が白州に出座して、人定尋問と「1通糺」という、概括的取調べを行い、今でいう未決勾留の決定をするのです。
「出座」というのは、一段と高い所に「座」が用意されていて、一同が待っている所に威風堂々と現れて、みんなが平伏するうちに着「座」するというイメージです。
今の法廷も、関係者一同が待ち受ける所へ、裁判長以下の裁判官が法服を翻して入場すると一同起立して迎え、裁判官が着「席」するとこちらも着席する慣らわしです。
江戸時代は平伏だったのが、明治以降西洋や中国式に起立に変わっただけです。
不思議なことですが、西洋式では、偉い人がイスにかけたまま話を聞いても良く、目下の人が目上から話し掛けられて、坐ったまま受け答えするのは、非礼と言う感じです。
他方目上、目下と言う言葉から分かるように、上から見下ろすような形で話し掛けるのも非礼とされ、アテンダントや、スチュワーデスなどは小腰をかがめて話し掛けるのが普通です。
中国では儒者などの姿勢、あるいは、軍人のように敬礼して直立不動の姿勢で対応するとかの形式が要請されます。
この目の位置による上下関係は、日本だけの習慣では有りません。
西洋でも、中国でも、王様は高い壇上から臣下を見下ろす形式ですし、裁判法廷は今でも、高い法壇が設定されています。
上下(すなわち目の位置の高低)を基準にするならば、日本のように土下座ないし平伏形式の方が一貫しているでしょうが、西洋や中国では(と言うことはほぼ世界中と言うことです)イス生活のために、目の高さ・・上下関係と起立の関係は矛盾関係になってしまったのです。
矛盾してもイスに坐っている方が楽に決まっていますから、上位者がイスに座ったママと言うややこしいルールが定着したのでしょう。
そこで変な感じですが、電車などで、目上の人に出会うと、席を立って譲ろうとするのですが、目うえの人も、「オ、そうか」とすんなり入れ変わるほど尊大な人は滅多にいません。
そうなると、若手はイスに坐ったまま受け答えしなければならず、小腰を浮かせながら話すようになって、非常にぎこちない関係になるのです。
そこで、思い切って若手も立ってしまい、並んで話ながら電車が進むと言うことになります。
ころあいを見計らって、上司にどうぞともう1度席を勧めたり、その間にアカの他人が割り込んできて坐ってしまったりして一見落着となることもあります。
この奉行の「出座」と言う言葉は、最近はやりませんし、何となく大袈裟な感じですが、今風にいえば、「出席」というところでしょうか。
しかし「出席」といえば、生徒になったような気分ですから、お偉いさんのイメージに反して、これもなじみません。
元の漢字の意味からすれば、「座」も「席」もどちらも敷物から発達したものですが、今では「席」といえば座のような広がりがなく、せせこましく区切られた箱物の席のイメージです。
料理・・・和食で言えば、松花堂弁当みたいなものです。



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