08/22/06

公開の裁判を受ける権利5(憲法187)publiclyとは?2

明治の初めには、役所の仕事は、公的なもの=パブリックと言う理解にたどり着いたのでしょうが、それまでは、02/17/04「罪刑法定主義と公事方御定書7(知らしむべからず)」のコラムで紹介しましたが、刑法等の御触れは、禁止するばかりで、それに反したら、どうなるかを全く秘密にしていたのです。
基本的には、国民に「知らしむべからず」式で、公開しない仕組みでしたから、公的行為=秘密主義だったのです。
今でも役人の秘密主義は大変なものですが、江戸時代からの刷り込みですから、ものごとには歴史があります。
パブリックと言う言葉が入って来たときに、「裁判はプライベートなものではなく、パブリックなものです」と言われると、そりゃあそうだと何となく納得したでしょう。
パブリックとは、日本の政府のやることらしいが、パブリックなものの反対語は、プライベートと言い、「プライベートなこととは、人に知られたくないもの・・秘密にしたいものを言う」との説明を聞いていると、公的なものは、秘密にすべきでないことになります。
公的なものごとは、須らく秘密にすべきだという大原則で生きてきた役人としては、パブリックを「公的」と翻訳すると公的なことは「秘密にするものではない」となってしまい困ってしまいます。
パブリック=公的と言うだけの翻訳では、秘密主義の役人の基本と矛盾してしまうのです。
そこで単に「公的に行う」と言う翻訳を止めて、公に開が付いた「公開」にしたのかも知れません。
公的行為=秘密主義の原則を守りたかったのでしょう。
そう言えば、裁判所構成法の「評議を公行せず」と言う熟語を、08/12/06「裁判所構成法15(評議の公行)と裁判所法17 」で紹介しましたが、「公」に対しては「私」ですが、「公行」に対する熟語に「密行」と言う言葉がありました。
法律用語としては、保全事件は密行性が特徴であると言われています。
そうした秘密主義の歴史から見ると、パブリック=公的と翻訳すると、逆に非開示・・秘密が原則になってしまいます。
明治以降刑法その他の法律は国民に隠さず、逆に布告する方向へ変わっていましたから、裁判を開示すること自体には、異論がなかったのです。
それに何といっても、お上の独占事業である筈の裁判が、公衆によって運営されるような印象のある民衆のための裁判などと翻訳することは、出来なかったでしょう。
そこで、本来のフランス語や英語の意味を活かして、開示するか否かを基準にしてパブリック=公(衆)的と訳さず「公開」と意訳したのかも知れません。
こうなると、民衆の監視によって裁判するイメージ・・・フランス革命後できた法典の引継ぎでありながら、見せしめのために公開処刑するような印象へ換骨奪胎が、できてしまったと言う訳です。
面白半分の野次馬にまで、公開するのは、公正な裁判の担保・被告人の人権保障のために始まった制度趣旨から考えて、おかしなものです。
もしかして、当時は、公開と開示の違いが分かっていなかったのでしょうか?
勿論漢字の意味については昔の方が詳しかったでしょうが、開示請求権と言う権利を認めるのは極力避けたい心理も働いたでしょう。



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