08/19/06

江戸時代の刑事手続・・・吟味筋3

今回は江戸時代の吟味筋の話です。
吟味筋は、07/17/05・・・1「江戸時代の裁判5(吟味筋2)のコラムで書いて以来、奉行所が警察署に変わったことや、その後に明治以降の違警罪即決例・・・簡易裁判所の機能に話しが進んでしまったので、やっと元に戻したというところです。
吟味筋の「筋」とは、単にその部門・・系統と言う程度の意味でしょう。
今でも「その筋の人に頼んで・・・」とか、「その筋に訴え出る」などの用法が残っています。
現役的利用法では、「その筋のもの」もっと簡略に「筋もの」と言えば、暴力団関係者を指すことが多いようです。
ところで、今では「吟味する」などと言うと、日本酒の大吟醸などのイメージでしか思いつかない人が多いでしょうが、江戸時代では刑事手続きのことでした。
ちなみに、吟醸とは昭和50年代に広島杜氏が創作した日本酒の製法のことらしく、せいぜい丁寧に作ったと言う意味程度のブランド名でしょう。
今では、日本酒用の山田錦を削り込んで精米分が50%以下と言う大幅に削り込んだものを言うらしいです。
吟味の吟とは、もともと口の中で詩歌などを口ずさむことを意味し、今でも、吟遊とか俳句界などで吟行すると言うのが、それです。
これが何故江戸時代に、刑事手続を意味する吟味筋と言うようになったのか、今のところ私は知りません。
もともと「吟」とは、口を塞いで口中のものを隠す意味もあるようですから、いわゆるお白州で泥を吐かせる意味もあったでしょう。
他方で、尋問に当たる与力側では、口を割った罪人の自白をそのまま受け入れず、念のために口に含んでじっくりと味わって真実を見極めると言う両方の意味から、このような転用が生まれたのかも知れません。
刑事手続は、民事と違って拷問等による嘘の自白もあるでしょうから、正しい判断をするためには、慎重に審理する必要性があると言う考えから、生まれた可能性もあるでしょう。
刑事処分には、本人が納得さえしてれば良いと言うのでなく、昔から実体的真実発見の要請が強かったのです。
ちなみに、02/19/04「江戸時代の裁判1(出入筋と吟味筋)与力 同心」のコラムで紹介したように、民事系の手続は出入筋と呼ばれていました。
今では「出入り」と言えば、やくざの出入り・・・トラブルのようですが、江戸時代には、民事紛争を指していった言葉だったのです。
刑事事件では、民事のように簡単に口から口へすぐに出たり入ったりするものではなく、仮に自白しても口に含んでじっくり味わいながら、真犯人が別にいないかじっくり審理するという意味だったのでしょう。



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