08/10/05

天皇制の存在根拠は?(国民の総意)

アメリカなどの代表者を国王と翻訳していると、年月の経過とともに、終身制・天皇の世襲制に対する疑問が生じるだけでなく、天皇の地位が何に基づくのかに対する疑問が生じることも大きな心配だったでしょう。
何しろ、アメリカやフランスは選挙で選ばれていたのですから、日本の王様も「選挙で選ぼうよ」と言う意見が出て来る可能性があります。
そんなことになる訳がないだろうと思う方が言いでしょうが、「選挙」と言う意味の本質は、国民の総意によって王様の地位を決めようと言う思想ですから、国民の総意の決め方には信任投票に始って投票権者の制限などいろいろなやり方があるのです。
国民の支持が必要と言えば、今では完全な普通選挙一つだけしか思いつかない方が多いでしょうが、国民の意思を確認する仕方はいろいろあるのです。
選挙までやれという極端な意見にまで行かなくとも何となく「総意」と言う形になったのが現憲法ですから、王制の存在根拠を国民の意思に委ねると言っても、いろいろなバリエーションがあることの実例です。
「『大統領も王様の一種』だと翻訳することなど出来るわけがない」という固定観念の人の方が今では多いと思いますが、これまで書いて来たように「終身制でなければ、王制でない」と言う基準も怪しいし、「世襲制を基準にする」のもおかしいし、「国民の支持によって成り立つなどと言う考えは天皇制・王制と両立しない」と言う考えのほうがおかしいのです。
もしも、国民の支持に関係ないのが、王制だというならば、今の天皇制を否定することになります。
ともかく私の固定観念で書き進めますが、明治の初めに政治に関係する単語を翻訳するには、とても気を配ったものだと思います。
前回のコラムで「告文」を紹介したように、天皇の存在根拠を注意深く書き込んでいます。
「皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ宝祚ヲ継承シ・・・・」

西洋の王権神授説に着想を得たと思いますが、西洋ではとっくに廃れた思想でしたから、こんな半端な思想では危ないと言うことから、これを採らなかったのでしょう。
それよりももっと根源的に、「そもそも天皇家は神に始ると言う神話」の拡大強化に努めていくのです。
その結果の行き着くところは、「現人神」にまで昇格していくのです。
ついでに言っておくと、「大君は神にしませば・・・と万葉集にも謳われていますので、天皇家は神の子孫であると言う神話は、明治政府の創作したものでは有りません。
柿本人麻呂の有名な歌ですが、参考までに万葉集の原文を紹介しておきましょう。
皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為流鴨
大君(おほきみ)は、神にしませば、天雲の、雷(いかづち)の上に、廬(いほ)りせるかも
「王 神座者 雲隠伊加土山尓 宮敷座」
その外にも万葉集には「大君は神にしませば赤駒のはらばふ田井を都となしつ」などいくらも用例があるのです。
神の子であろうとも、それを信ずる国民の総意が必要なのは否定できないのです。
だからこそ、明治大正昭和の戦前の政府は必至に神話教育をして来たのでしょう。
国民の支持が不要なら、そうした教育もいらなかったのです。



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