08/08/04
与力(10)(農村の自治組織)主人とは?
徳川政権確立までの武士は、正規軍人ですから軍事目的の治安維持は担当しますが、庶民の治安維持の責務を担当していなかったのです。
ところが、政権が安定してみると日常的な庶民の治安維持が重要な責務になってきます。
「飛鳥尽きて,良弓蔵(かく)され…」という喩えのとおりで、武人は不要になってきます。
ところで、03/10/04「幕府(将軍家)とは?1(大君・大樹公・・犬公方)」以下で連載したように、私は幕府と言う概念を認めない立場ですが、幕府と言う一言で表せる概念は便利ですので、これからも便宜使いますので、矛盾したコラムだと目くじら立てないようにお願いします。
ちなみに鎌倉時代は、幕府は裁判を担当していただけで庶民の治安維持をやっていなかったのです。
農村共同体では自治組織で何でも解決していたのですが、戦国以来の城下町の発達で、都市住民が生まれると、自前での解決が(村ではゴミから消火・葬式・道路普請まで何でもやっていたのです)不可能になってきます。
自治組織といえば、堺の町の自治組織や京の町衆組織が有名ですが、これらは農村以外で成立したから有名になっているだけで、農村ではずっと自治が基本だったのです。
たとえば、ある村の例で、不行跡のあった領主が村人連から朝夕の食事内容の一々にまで指図されて、領主が誓約した文書が残っています。
今でいえばサラ金で失敗した若者や夫が、親や妻から生活指導を受けているようなものです。
不思議なもので、刑事事件になると、妻のいる人は妻が必ず出廷して、裁判所に
「今後は2度と酒を飲ませない(覚せい剤をやらない)、あるいは飲まないように監督する」
などと誓約し、裁判所も「本当に監督できるか」と質問するのが、普通の刑事事件のパターンです。
(妻が出ないと、奥さんからも見放されているのか?と評価されがちですので、弁護士としては言い訳しなければならない雰囲気です)
奥さんは
「主人は私の言うことは何でも聞きますので・・・。」
と、答えるのが普通ですが、これもおかしな事です。
そんなに何でも言うとおりになる人が「主人」と表現されるのですから、日本では奉られてる人に実権があるとはいい切れない草の根の実例でしょう。
「主人」などと奉られている人は、実は家臣から食べ方までがんじがらめに規制されているのが日本の上から下までの社会です。
落語では目黒のさんまが有名ですが、その他にも、殿様が美味しかった魚のお代わりをさらに所望して困っている家臣に向かって、(魚をひっくり返ししているのを前提に)「何ならちょっと横を向いていても良い」といって笑わせる落語があります。
わが国では、殿様に始まって末端(長屋・・・・・今ではマンション)の主人といわれるサラリーマンまで、下々?の妻に管理される社会のようですから、西洋や中国の歴史観を持ってきて、「虐げられたれた庶民」という構図は実態に合っていないところがあります。
カムイ伝などの漫画あるいは社会科の教科書は,戦後一世を風靡したマルクス史観に偏りすぎて、農民は搾取される一方という描き方ですが、実は農民はしたたかで、中世以来の自治組織を温存していて、領主も彼らの意見に従い、自分の食事内容まで指図されていたのです。
映画7人の侍の例でも、(史実考証が正しいかどうかまでは分りませんが、・・・・)村で、7人の侍を雇っています。しかし、町衆の自治は農村に比べて脆弱です。
警備組織は浪人など雇うしかなかったばかりか、都会の常として、殆どのものごとを自給自足できない点で、農村の自給自足的自治とは意味が違います。
江戸時代に町奉行が置かれたのは、江戸、京、長崎、大阪などの都会の発達したところにおかれ、農村部にはなかったのは、そうした必要性との関係があるでしょう。
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