08/24/03

起訴便宜主義1(刑事訴訟法4)

勾留の話が出てきましたので、勾留の実務と、保釈運用の説明に入って行きたいのですが、そうなると、今回の話(検察の権限)とは、テーマがずれてしまいますので、別の機会に説明する事にします。
ところで、みなさんは、「便宜主義」と言う変な言葉を聞いたことがありますか?
こういう言い回しは、野党等が、政権を批判するために良く使う、ご都合主義などと語感が似ていますね。
でも、これはれっきとした法律用語であって、学者が誰も批判しないものです。
世の中にいろいろな犯罪がありますが、検察は何もかもやりきれないし、社会的重要性の差があることから、警察や検察官が、捜査対象にした事件でも、それを起訴(裁判にかける)するか否かを、検察官が、自由にきめて良いと言う原理です。
もちろん一定の基準があり、内部決裁も必要なことは、検察官一体の原則で説明しました。
刑事訴訟法を、もう一度見ましょう。

刑事訴訟法
第248条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
第249条 公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。」

247条により、検察官が起訴する権限を独占していることになりますが、そうなると、検察官は、自分で捜査した場合、または他の官庁や捜査機関から事件送致を受けると、常に起訴しなければならないのか、それとも、裁量によってふるい分けることが出来るかを、法律できめておく必要が生じます。
捜査や逮捕した以上は、全部起訴しなければならない制度とすれば、検察官の職務は、主として、公判を追行することだけとなります。(主としてと言う意味は、公判維持のための補充捜査権が、必要だからです。)
まさに司法機関の一翼をになう職務性が顕著と言えるでしょう。
その場合でも、捜査を受ける国民に対する影響は甚大ですので、中立的な運用をしてほしいものですが、影響力は格段に小さくになります。
ところが我が国では、247条をお読みになれば分かるように、検察官の裁量によって起訴、不起訴を決められることを宣言したもので、これを起訴便宜主義の原則と言いならわしています。
捜査した以上、または、逮捕や捜索した以上は、全てを裁判所に起訴しなければならないとして、捜査の全てを事後的に国民に公開し、批判を仰ぐ方法も考えられるでしょう。
しかし、それでは、わずかな窃盗で、犯人が謝っていて被害者も今度だけは許してあげようという場合や、喧嘩の場合、怪我の程度や、事情によっては、一旦警察が介入しても、あとは、当事者の話し合いに任せてよい場合もあります。
そうした場合も、全て、裁判所で判断する制度にすると、ほんの些細な事まで、公開の法廷を開いて、審理しなければならず、呼び出される国民にとっても煩雑すぎます。
また国家としても、国費がかかりすぎるので現実的ではありません。
そこで、捜査が終了した時点で、その事件の軽重、犯人の性格、年齢境遇、犯行後の状況等々を総合判断して、起訴または、不起訴を決める機関を設置する必要が生じます。
その機関を警察に任せると、戦前のように、むやみやたらに逮捕しては、裁判所に提出せずに、釈放しては、また逮捕する繰り返しが可能になってしまい、人権蹂躙の復活になってしまいます。
そう考えると、その機関は法律家の関与するものでなければなりません。
大げさな公開の法廷ではなくとも、法律家の関与があれば良いというところから、捜査機関の最上位に位置し、かつ法律家である検察官という事になったものでしょう。
ここでも、新しい検察官に対する戦後の改革時における信頼の厚さが見て取れますね。
ただし、少年に対しては、家裁が、少年の処遇に対する第一次的権限がありますので、家裁送致しないことは許されません。
少年法に関しては別に説明する事にしましょう。




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