08/09/03
会社の乗っ取りと犯罪(刑法1)
文書偽造にならないことは、これまでの説明で分かったでしょうが、先ず、おかしいことだと思う点から順次ほぐして行きましょう。
相談に来る人や読者の皆さんは、縁もゆかりもない人がイキナリ自分の会社の社長(代表取締役)に登記されているのが、許せないのです。
そこから、何らかの不正な文書が提出されている筈だと言う素朴な疑念が生じ、差し当たり、聞いたことのある文書偽造と言う、恐ろしそうな罪名が思い浮かぶと言うところでしょうか?
ところが、文書偽造にならないことは、前回までの説明で分かったと思います。
「知らぬ間に、無関係の人に登記されてしまうのは許せない」と言う意味は、どう言うことでしょうか?
誰が登記したのでしょうか?
登記は登記申請行為があって、関係書類が揃っていれば(実質審査権はなく形式審査主義と言います。)受理して登記官が登記する仕組みです。
登記申請行為は、司法書士が普通は、司法書士が頼まれて代理人として申請しますが、その委任をするのは、前回のコラムで見たように、新代表取締役です。
皆さんが納得出来ないのは、ともかく、結果として不正なことが行われている点でしょう。
ここで、何が不正なのかを考えてみて下さい。
登記された内容が、事実に反していることが、許しがたい・不正だと考える基本ではないでしょうか?
事実に反する内容の登記をしたのは、誰でしょう?
登記簿に、虚偽の事実を記載したのは誰でしょう?
登記簿に登記するのは、登記官であって、申請した人ではありません。
商業登記法をもう一度紹介しましょう。
商業登記法
第4条
登記所における事務は、法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所に勤務する法務事務官で、法務局又は地方法務局の長が指定した者が、登記官として取り扱う。第5条
登記官又はその配偶者若しくは4親等内の親族(配偶者又は4親等内の親族であつた者を含む。以下この項において同じ。)が申請人であるときは、当該登記官は、その配偶者及び4親等内の親族以外の成年者2人以上の立会いがなければ、登記をすることができない。登記官又はその配偶者若しくは4親等内の親族が申請人を代表して申請するときも、同様とする。
- 前項の場合には、登記官は、調書を作り、立会人と共にこれに署名押印しなければならない。
登記官が、虚偽の事実(正規の総会を開いていないのに開いたものとして)をそのまま登記したのですから、登記官が不正行為をしたのでしょうか?
登記官が、これを知っていたならばそうなリますが、知らないで受け付けてしまったのならば、登記官に犯意がありません。
それどころか実行行為の意識すらないのですから、登記官が登記する行為そのものは、犯罪行為とすら言えないのです。
行為の意味や犯意の関係は、難しいので、また別の機会に説明しましょう。
申請代理人の司法書士は、どうでしょうか?
司法書士も、登記官と同じで、頼まれたとおり仕事をしただけであって、申請書を作成したり、法務局へ提出する行為そのものは、何ら犯罪性(実行行為性)を持ちません。
法務局へ書類を届けた司法書士の事務員は、なおさら何も知らないでしょう。
矢張り、代表取締役であるとして、真実に反した総会議事録を作成して、司法書士に委任した人物が怪しいですね。
(中小企業の総会議事録などは、司法書士が原稿を作成して関係者に署名してもらうだけの実務慣行である点は措きます。)
この人物はさて、何をしたのでしょうか?
内容虚偽の総会議事録を作成したことと、これを持ち込んで、司法書士に登記依頼をしたことですね。
彼は、自分で登記には、全く関係していません。
自分で手を下さなくても犯罪者になることがあることは、皆さんも映画や小説で良く御存じでしょう。
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