08/27/02

慰藉料について  4(補完的機能の功罪)

前回迄のコラムで補完的機能について紹介して来ました。
補完的機能は、裁判所による柔軟な思考による被害回復が図られている例で、硬直的な法の不備を補うものとして、高く評価出来ると思います。
しかし、補完的機能を拡大して行くと、わかりやすい規準がないまま、裁判官の裁量によって損害額が決まる事になり、損害のあった限度で損害賠償をすれば良いという、近代法の原則(近代社会においては、予測可能性が重視されますので、因果関係も予測可能な相当因果関係限定されています。また経済界では、損害の平準化の為に保険が発達していますし、刑事裁判手続きでは、due prosess (適正手続きの保証)が、刑罰では、罪刑法定主義等の原則が生まれて来たのです。)に反した分野が、どんどん広がってしまって、経済活動に支障を来すでしょう。
やはり慰謝料は、本来の言葉通り、非財産的損害を慰藉する事を原則とし、衡平の為に例外的に、補完機能として利用する場合には、速やかな立法作業をするべきだと思います。(著作権や特許権侵害の場合にも、損害立証が困難でしたが、法改正によって推定規定が?かれるようになっています。)
前回のコラムの事例等は、いちいち立法出来ないと考えられますが、損害の立証の負担を免れる為に、不動産取り引きで一般化している手付け倍返しのように、違約金を予め契約で定めておく等、業界でいくらでも対応が可能なのです。
銀行のように一方だけが強くて、(銀行が少しでも不利な事を約束する)公平な約款が出来そうもない時は、(保護するばかりではなく国民を守る立場からも)監督官庁の出番でしょう。
そうすれば、銀行のミスで倒産させられた時には、どのような違約金を支払うと予め決めておけば良いので、何でも法律を作らねばならないものでは有りません。
以上見て来たように、慰謝料は、原則として非財産的損害の賠償を直接の目的とするベきであって、際限なく補完的機能を拡大し、また温存すべきではないと私は考えています。
ところで、同じ全治1ヶ月間の受傷でも交通事故と、その他の場合とでは金額に違いが有るのでしょうか?
次のコラムでこの問題について考えてみましょう。




関連ページリンク

コラムTOP

リンクを当コラムにはられる方はお読み下さい

©2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design / Maintained by Pear Computing LLC



ブログ
株式投資