08/26/02

慰謝料について  3(財産的損害に対する慰謝料)

慰藉料とは、読んで字のとおり財産的損害を除く損害、すなわち『金に代えられない』『死んだ息子を返せ』という損害を『そこを何とか』と頼み込んでお金で勘弁してもらう為の便法として、お金に藉(か)えて慰める事ができるように国家権力が法として決めたものですから、(慰藉料 1の解説参照。)(慰謝=謝って慰めるのでは有りませんので注意して下さい。)
本来財産的損害には、慰藉料と言うものは発生しないはずですが、交通事故・その他各種事件において、財産的損害は存在するが、それを具体的に証拠上認定出来ない時に、被害者の救済の為に、慰藉料の増額理由としたりする例が増えています。
これは、『当事者が主張しない請求について裁判所が認める事ができるか』、という訴訟理論上の問題点がありましたが、最高裁判所が慰藉料請求も財産損害の請求も、賠償請求権としては一個であり、当事者の分類に拘束されない、という判断で決着がついています。
 実務をやっている弁護士から見ても、財産損害の具体的な証明は困難、というより不可能な時に、慰藉料の算定については、何と何で幾らになって、という算式が不要なので、裁判所が、『諸般の事情を総合考慮して、この程度で納得出来ませんか?』相手も『その程度なら、迷惑かけたのは事実ですから良いですよ』と和解する事が多いのです。
例えば、銀行の不手際で、手形が不渡り事故となってしまい、存続すべきであった会社が突如倒産騒ぎに巻き込まれたような場合、被害会社にとって幾らの損害か、証明出来るものではありません。
或いは大学受験10日前に交通事故被害に遭った場合を考えてみて下さい。
その子供の偏差値では優に東大に合格していたし、悪くても早稲田・慶応に行けたと言う場合、『1年間の浪人の損害をどうしてくれる』と言うのが被害者の心情でしょう。
私の依頼者の場合、本当に次年度に予定通り合格しましたが、高校生だから働いていないので、休業損害は1円も請求出来ず、単に入通院期間中の慰藉料だけでは、納得出来ません。この人は、一生浪人して入学したハンデがついて回りますし、(履歴書にいちいち交通事故の為浪人したと言訳を書く訳に行きません)その損害(精神的損害も有りますが1年間社会人になる事が遅れる財産上の損害については、その算定、立証は困難です。)は、莫大なものです。
数え上げれば幾らもありますが、何とかしなくってはというときに、単なる入通院期間から考えられる額よりも、慰藉料を増額したりして、当事者の納得を得られるようにすることがあります。
こうした運用は、イギリスの衡平法(エクイテイ)裁判所(コモンロウ裁判所とは別に存在する)的な機能を果たしているもので、これを我が国では、慰藉料の補完的機能とよんでいます。
本来損害を被った人が、もっと立証をしやすくする方向へ法制度を整備して行くべきであるとは思いますが、そうは言っても、日々事件は起きますし、裁判所も『法律ができる迄泣き寝入りしなさい』と言う訳に行かないので、こうした運用が定着して来た訳です。
こうした運用の定着と、軌を一にして最近では、慰藉料と言う漢字を慰謝料と書く印刷物が増えて来ました。
被害者に謝って納得してもらうべき金額であって、精神的損害に限らないと言う事でしょうか?
このようにして立証困難を救済する為に本来財産的損害である事についても慰藉料が認められるようになって来たのです。




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