07/26/06

即決裁判手続12と検察官の権限強化4

検察官の権限の変遷については、07/13/06「現行刑事訴訟法27(検察官18・・公訴官へ2)」まで、検察官の歴史を連載して来ました。
最初は弾上台の下部機関として発足し、裁判所の監視役として始ったのですが、そのうち訴訟手続の当事者としての役割が強まって、戦後の刑事訴訟法で、公訴官=原告官として完成したと書いて来ました。
今回の即決手続の創設は、これのゆり戻しになるのでしょうか?
ところで、略式手続では
   「簡裁では、もともと罰金刑しか言い渡せないのだから仕方ない」
と言うことだけでなく、略式手続の条文を見ても分かるとおり、「公判開始前の手続」となっていて、正式な公判でない位置付けでした。その点でも裁判所に遠慮した形式になっていたのです。このような形式の違いから、略式手続で罰金や執行猶予が決まってからでも、2週間以内にこの決定に対し異議申立てできる制度になっていて、異議申立てが有れば、自動的に通常の「正式な」公判手続が行われることになっています。刑事訴訟法を、もう一度見ましょう。刑事訴訟法第464条 略式命令には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑及び附随の処分並びに略式命令の告知があつた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる旨を示さなければならない。

第465条 略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる。
2 正式裁判の請求は、略式命令をした裁判所に、書面でこれをしなければならない。正式裁判の請求があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を検察官又は略式命令を受けた者に通知しなければならない。

このように略式手続はあくまで略式の手続であって、本物ではないと言う扱いで、何らの理由もなくとも「正式裁判」の請求をでき、そこから正式な第1審の開始です。これに対し、今回の即決裁判手続は、裁判手続と言うようにれっきとした第1審の公判での審理ですから、これに対する不満は、同じ地裁への異議申立てではなく、高裁への控訴となり、控訴の理由も必要です。
それだけでなく、その担当する裁判所である地裁では、実刑も言い渡す権限があるのに、この法律では、執行猶予しか言い渡せないのですから、実刑言い渡しの選択権を事実上奪うことになるのが問題でないのかと言うのがこの連載の疑問です。
しかも、この種の手続きに乗る事件数はかなりの大量・・・もしかしたら数割近くになると言うのです。



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