07/22/06
即決裁判手続5(刑事訴訟法46)裁判所の権限4
では、もっと刑を重くすべき・・実刑相当だと言う場合は、どうでしょうか?
ところで、我々の受任事件で争いがある場合で、検事も弁護人も最後までやってどちらが勝つか予測のつかない事件も数多くあります。
この手続きに乗せるについては、こうした争いのある事件で、執行猶予確実の即決手続でやるとの取り引きの下で、弁護人や被告人が、無罪の言い分を引っ込めて、
「執行猶予になると決まっているならいいか!」
と言うことで、検事の言うとおりの有罪の調書にサインしている場合が、当然発生してきます。
こう言う紳士協定・・アメリカで言うアレインメントをしている事件に付いて、水面下の複雑な事情の分からない裁判所が、この調書内容から言えば実刑相当事案なのに執行猶予の手続きに乗せるのは許せないとして、独断でイキナリ通常手続きに変えて実刑判決をすることが出来るかどうかということです。
これが一番の問題点かもしれません。
勝敗不明だからと御茶を濁した取り引きを、裁判所がそのまま認めることが許されるかどうかの問題です。
民事言えば、和解は望ましいものとされていますが、実体的真実発見を目標とする刑事裁判所が、そのような不明瞭な取り引きを黙認できるのか、 「いや、正義感で全部やり直す」と言えるのかの問題です。
ことは、刑事訴訟が、実体的真実発見のためにあるのか、民事同様に「当事者さえ良いと言うならいいじゃないか」と言う当事者主義に徹するのかと言う問題にもなってきます。
当事者主義に徹するならば、被害者の同意または意見も重視すべきことになってくるでしょう。
われわれ弁護士が、依頼者の意見を無視できないように、検事も、究極の依頼者?である被害者の意見が重きを置くようになるでしょう。
いずれにせよ、裁判所の正義感だけで、この取り引きをご破算にできるというならば、取り引きを前提に認めた調書類は一切証拠能力を認めないと言う規定が必要になってくるべきでしょう。
ところが、条文では、手続を更新するだけでよいことになっていて、調べ済みの調書類は、そのまま証拠能力が認められることになっています。
これでは、被告人側にとっては、国家から騙し討ちにあったようなことになりますので、法的安定性を損なうのではないでしょうか?通常手続に移行した場合、それまでの証拠排除の手続がないのですから、この関係上文全体としては、当事者による一種の取り引きを認める前提で成り立っているように読めます。こうした点は兎も角として、短時間の要点だけ読み上げる流れ作業方式の即決判決の審理方式で、本当の事情を知るヒマのない裁判官がこのような責任のある判断をするのは、合理的に考えて不可能でしょう。もしやるとすれば、神業そのものですから、実際には、不相当の決定を出来ることは皆無であろうと考えられるのです。
ですから、この手続きは、事実上と言うよりも、限りなく法律上に近く検事が判決内容を拘束できる仕組みになったと評価すべきでしょう。
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