07/16/06

刑事訴訟法35(調書裁判の実態5)特信性の認定2

こんな非常識な規定があっては、弁護人は証人尋問で努力する気力が失せてしまいますよ!
反対尋問で成功したら、却って調書が採用される仕組みです。
弁護側として、ある人の目撃証言がおかしいとして、せっかくその人の調書の取調べに反対し、実際に証人尋問してみると、矛盾が分かって大成功だと思っていると、この条文で、調書との食い違いがあることを理由にと却って証拠にできると言うのですから、何が何だか訳のわからない規定です。
ただし、私のように疑問に思う人が多いことから、この条文では続けて、
 「但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。」
と言う限定をつけているのです。
これを略して特信状況といいます。
せっかく矛盾証言を引き出したときに、検事調書が逆に証拠採用されるのでは、意味が有りませんから、この特信状況の認定は、よほど厳格にすべきでしょう。
ところが、裁判の実務では、検察官の取調べで無理な誘導などがなかったかどうか、検事調べは事件直後であったのに対し、今はそれから半年も立っているから記憶が事件直後の方が正しいのでないかなど、ホンの一寸したことを聞くだけで、特別な信用出来る状況があると言う決定を裁判所が出すのが普通です。
調書裁判よりも口頭審理を原則とする法の趣旨から言えば、特信状況の認定には、法廷証言の信用性を覆すほどの、弾劾に検事が成功したときだけに絞るべきでしょう。
法廷で検事が、弁護側有利な証言の弾劾に成功したら、その証言の信用力がなくなくなるのですから、その上に検事調書を出す必要がないはずです。
このように考えると、検事調書を出せる場合と言うのは、法廷では完全に検事が負けている場合の助け舟として、検面調書の提出規定を用意していることになるのですから、適当な弾劾で足りると言うのが裁判所の運用の基礎にあるのでしょうか?
裁判所は、
「証拠能力と証明力は違うから、提出を認めるだけだからいいでしょう」
と言う考えのようですが、実際には、「調書にどう書いてあるのか?」見てみたい誘惑に勝てないのが実態でしょう。
英米法の証人尋問中心主義の刑事訴訟法を導入したものの、この規定によって、結果的に殆どの事件で検事調書が採用されているのです。
これでは、検事調書は原則として採用され、その弾劾のために証人調べがあると言う程度に逆転した運用になっていると言えるでしょう。



関連ページリンク

Powered by msearch
稲垣法律事務所:コラム:検索

検索ベースはこちらから

 


コラムTOP

リンクを当コラムにはられる方はお読み下さい

©2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design / Maintained by Pear Computing LLC



ブログ
株式投資