07/11/06
予審判事6(知事と判事)「事」とは?(民法167)
前回まで、重要な国家意思の表明であるから「判事」と命名したのであろうと書いて来ました。
では「事」とは何でしょうか?
今では事柄と言う意味で多く使われていて分り難いのですが、「事」とは、県知事・参事などの用例からも分かるように、一定レベルでの最終決定権者、長官を意味したものでしょう。
このように「事」とはある分野の長官を意味することは、版籍奉還で、元の大名が知藩「事」となり、首席家老が大参事となった、明治初年の版籍奉還のころの官名から見ても、うなづけます。
知藩事任命と同時に大名家の首席家老が、大参事に任命されていたのですが、参事とは、この地方長官の決定に参与できるものと言う意味だったのです。
今ではどんどん価値が下落して、いろんな役所で課長クラスを参事と呼んでいるようですが、もとはこうした地方長官に次ぐ家老職の謂いでした。
ちなみに幕末長州では、萩のお城に対し、実務を仕切る政府のことを「山口の政事堂」と称していたことも参考になるでしょう。
(朝議に参与できるのが、06/01/06「参議9(明治の参議2)藩閥政府2」前後に内閣の前身として紹介してきた参議です。)
知事の語源については、07/20/05「藩の消滅3(版籍奉還と知藩事)」のコラムで紹介しました。
知事と判事と並べると今の語感から言って、釣り合いが取れないような印象ですが、判事や検事は当時、今のように数が多くはなかったのです。
後に大岡越前が、実際にどれだけの裁判していたかの関心で、コラムを書く予定ですが、兎も角江戸時代、江戸町奉行は2人しかいなかったいは数藩にまたがって、一人しか派遣されなかった洋行帰りのバリバリのとても偉い人だったのでしょう。
フランス文学などでも、判事や検事が地方領主クラスと対等に話しをしている場面が多く描かれますが、そうした権威だったのです。
アメリカの検事が、今でも選挙で選ばれるのも、こうした伝統を引いているのでしょう。
今では法人の役員を理事と言い、そのトップを理事長と言うのが普通ですが、民法では、法人を代表するのは理事長ではなく「理事」となっています。
民法の出来た明治30年ころには、「事」と言う漢字だけで、組織のトップを意味していたことが分かります。
(後に、これが言葉のインフレにより、理事だけでは足りなくなって、各種団体では組織のトップを表すのに理事「長」と屋上屋を重ねるようになっただけです。)
民法
明治29・4・27・法律 89号(第1編 第2編 第3編)
明治31・6・21・法律 9号(第4編 第5編)
(理事)
第52条 法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。
2 理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。
(法人の代表)
第53条 理事は、法人のすべての事務について、法人を代表する。ただし、定款の規定又は寄附行為の趣旨に反することはできず、また、社団法人にあっては総会の決議に従わなければならない。
(理事の代理権の制限)
第54条 理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
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