06/14/08
医療観察法11の問題点(日弁連意見書)
これまで私の思いつき意見ばかり書いてきましたが、この辺で専門家の意見はどうだったかな?と思ってインターネット上で調べてみたら、日弁連意見書が見つかりましたので紹介しておきましょう。
このうち、導入部分は文章も長いので基本的に省略して第4の与党案に対する問題点の指摘を紹介します。
これによりますと、以下1〜4のとおり
(1)・・前回、私の印象・感触で書いた精神病者による再犯率も研究されていて、約6%に過ぎず特に高い訳ではないとなっています。
(2)入院期間の長短と犯罪発生率は関係がないどころか、充実した医療体制こそが重要という私と同様の調査結果に基づく意見です。
私の場合はデンマークの調査結果の孫引きですが、これは日弁連が直接西洋(英仏独蘭伊)に出張して実地調査した結果です。
デンマークに限らず西洋では、入院中心主義を既に廃止していることが分かるでしょう。
(3)これまで書いているように、この法律で入院期間を長期化しても初犯を防げないと言う意見です
(4)そもそも治療内容に差を付けようがないから、この法律で特別何をしようとするのか・・入院長期化を狙っているだけではないか?と言う私同様の疑問です。
こうしてみると、私の思いつき的コラムは、驚いたことに?結果的に日弁連の公式意見とほぼ同様であることが分かります。
法律家として合理的に考えて行けば、同じ結果になるしかないということでしょう。
精神医療の改善方策と刑事司法の課題
日弁連意見書
2002年2月15日
日本弁護士連合会
I はじめに
冒頭以降省略
・・・・精神障害と犯罪をめぐる問題は、自民党、与党の検討開始以前から法務省と厚生労働省の合同研究会で検討が進められていた。その検討のさなか、池田小事件が発生し、同問題がにわかに政治問題化し、同合同研究会と別個に自民党、与党での具体化が進められ、法律案の作成にまでいたったのである。
精神障害と犯罪をめぐる問題は、改正刑法草案(1974年)の審議過程から各界で厳しい議論が続けられてきた問題である。この問題への対処は、ある事件のセンセーショナルな衝撃に流されることなく、また政治的思惑にとらわれることなく、冷静になされるべきである。
II 精神障害と犯罪をめぐる問題にかかる当連合会の基本方針
冒頭以降省略
・・・・・当連合会は、かかる状況下で、昨年、国内精神医療実態調査および1982年のヨーロッパ調査(英、仏、独、蘭)に続くイタリア調査を行った。それらの調査によれば、精神医療を充実してこそ、時として起こる不幸な事件を防止できるとの当連合会のこれまでの基本方針を変える必要性は認められなかった。しかし、「精神医療の改善方策」を提示したものとして、当連合会には、精神医療の現実を直視したより具体的な精神医療の改善施策を提起し、医療関係者の司法への上記不満に真摯にこたえなければならない責務があるといわねばならない。
III 日弁連の提言
省略
IV 与党案の問題点
1 与党案の概要
・・・・・現行医療観察法とその骨子は、ほぼ同じのため省略(ただし日弁連の抵抗で、再犯防止要件は微妙な字句修正の上成立したのでちょっと変わっていますが、結果的運用は、これまで書いているようにほぼ同じです。2与党案の基本的問題点
(1) 精神障害者による犯罪行為に当たる事件は他の市民のそれに比べて、発生率、発生件数ともに高くない。時として起こる不幸な事件は精神医療の提供がなく、もしくは医療の中断という事態の中で生じているのであり、再犯率に至っては極端に低いという現状がある。重大な犯罪行為の前歴を持つ者が、再犯を犯している事例自体が極めて少数にとどまっている。
殺人、放火などの重大な犯罪行為にあたる行為の前歴を持つ者は6.6パーセントにすぎず、初犯が8割(84.3%にもなっているのである)を超えているのである(平成13年度犯罪白書)。
イタリアの北東部にあるトリエステという県では、1978年以降入院治療を廃し、地域精神医療の徹底のために、行政、医療関係者、地域住民が協力し合っている。これはまさに世界的にも注目に値する実験といわれているが、日弁連の今回の調査において、この地域における精神障害者の事件発生件数が入院治療を廃止する前には1年間で15人であったのが、最近の10年間では総数で4人と激減する実績を誇っていることが明らかになっている。
「初犯」を防ぐには精神医療の改善・充実以外にないことをトリエステの実践が示しているのである。
ところが、与党案は精神医療の改善・充実策がきわめて抽象的で具体性に欠けている。これでは精神障害によって時として起こる不幸な事件とりわけ「初犯」を防ぐことはできない。
民間精神病院がかかえている最大の悩みが「処遇困難患者」の問題であることはすでに指摘したとおりであるが、犯罪にあたる行為をした精神障害者は必ずしも「処遇困難患者」というわけではない。「処遇困難患者」のうち犯罪にあたる行為をした精神障害者はわずか17パーセントといわれている。
したがって、与党案のように犯罪にあたる行為をした精神障害者を、他の精神障害者と切り離して特別の専門施設に収容してみても、「処遇困難患者」のほとんどは民間精神病院に残ってしまう。
民間精神病院が直面している「処遇困難患者」問題を解決することなく、事件を起こした精神障害者対策だけがひとり先行することは、医療的観点からも、事件の未然防止という効果の点でも、適切ではない。
与党案は、犯罪成立要件である責任能力の判断が安易にされているのではないかという精神医療関係者からの疑問に誠実に応えようとしていない。精神医療関係者から出されている起訴前鑑定の厳格化の要望に応えようとしていない提言は、司法が改善すべき焦点に真っ向から向き合おうとしない点できわめて不誠実なものといわねばならない。そのうえ、与党案には捜査段階における医療中断・不在を是正する必要性についても提案がされていない。
精神障害者に医療を尽くすといった観点が欠如している。
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