06/09/06

明治憲法13(軍人勅諭3)

軍人勅諭の続き・・本文です。

いてや之を左に述へむ

1.軍人は忠節を尽すを本分とすへし

凡(おおよそ)生を我国に稟(う)くるもの誰かは国に報ゆるの心なかるへき
況(ま)して軍人たらん者は此心の固からては物の用に立ち得へしとも思はれす
軍人にして報国の心堅固ならさるは如何程技芸に熟し学術に長するも猶偶人にひとしかるへし
其隊伍も整ひ節制も正くとも忠節を存せさる軍隊は事に臨みて烏合の衆に同かるへし
抑(そもそも)国家を保護し国権を維持(ゆゐぢ)するは兵力に在れは兵力の消長は是国運の盛衰なることを弁へ
世論に惑はす政治に拘らす只々一途に己か本分の忠節を守り義は山嶽よりも重く死は鴻毛よりも軽しと覺悟せよ
其操を破りて不覚を取り汚名を受くるなかれ

1.軍人は礼儀を正しくすへし

凡(おおよそ)軍人には上元帥より下一卒に至るまて
其間に官職の階級ありて統属するのみならす同列同級とても停年に新旧あれは新任の者は旧任のものに服従すへきものそ
下級のものは上官の命を承(うけたまわは)ること実は直(ただち)に朕か命を承る義なりと心得よ
己か隷属する所にあらすとも上級の者は勿論停年の己より旧きものに対しては総へて敬礼を尽すへし
又上級の者は下級のものに向ひ聊(いささか)も軽侮驕傲の振舞あるへからす
公務の為に威厳を主とする時は格別なれとも其外は務めて懇に取扱ひ慈愛を専一と心掛け上下一致して王事に勤労せよ
若軍人たるものにして礼儀を紊(みだ)り上を敬はす下を恵ますして一致の和諧(くわかい)を失ひたらむには啻(ただ)に軍隊の蠧(と)毒たるのみかは国家の為にもゆるし難き罪人なるへし

1.軍人は武勇を尚(とうと)ふへし

夫(それ)武勇は我国にては古よりいとも貴へる所なれは
我国の臣民たらんもの武勇なくては叶ふまし
況して軍人は戦に臨み敵に当るの職なれは片時も武勇を忘れてよかるへきかさは
あれ武勇には大勇あり小勇ありて同からす
血気にはやり粗暴の振舞なとせんは武勇とは謂ひ難し
軍人たらんものは常に能く義理を弁へ能く坦力を練り思慮を殫(つく)して事を謀るへし
小敵たりとも侮らす大敵たりとも懼れす己か武職を尽さむこそ誠の大勇にはあれ
されは武勇を尚ふものは常々人に接(はじは)るには温和を第一とし諸人の愛敬を得むと心掛けよ
由なき勇を好みて猛威を振ひたらは果は世人も忌嫌ひて豺狼(さいろう)なとの如く思ひなむ心すへきことにこそ

1.軍人は信義を重んすへし

凡(おおよそ)信義を守ること常の道にはあれとわきて軍人は信義なくては一日も隊伍の中に交りてあらんこと難かるへし
信とは己か言(こと)を践行(ふみおこな)ひ義とは己か分を尽すをいふなり
されは信義を尽さむと思はゝ始より其事の成し得へきか得へからさるかを審(つまびらか)に思考すへし
朧気なる事を仮初(かりそめ)に諾ひてよしなき関係を結ひ後に至りて信義を立てんとすれは進退谷(きはま)りて身の措き所に苦むことあり悔ゆとも其詮なし
始に能々事の順逆を弁へ理非を考へ其言は所詮践むへからすと知り其義はとても守るへからすと悟りなは速に止るこそよけれ
古より或は小節の信義を立てんとて大綱の順逆を誤り或は公道の理非に践迷ひて私情の信義を守りあたら英雄豪傑ともか禍に遭ひ身を滅し屍の上の汚名を後世(のちのよ)まて遺せること其例尠からぬものを深く警(いまし)めてやはあるへき

1.軍人は質素を旨とすへし
凡(おおよそ)質素を旨とせされは文弱に流れ軽薄に趨(はし)り驕奢華靡の風を好み遂には貪汚(たんを)に陷りて志も無下に賤しくなり節操も武勇も其甲斐なく世人(よのひと)に爪はしきせらるゝ迄に至りぬへし
其身生涯の不幸なりといふも中々愚なり此風一たひ軍人の間に起りては彼の伝染病の如く蔓延し士風も兵気も頓に衰へぬへきこと明なり
朕深く之を懼れて曩(さき)に免黜条例を施行し略此事を誡め置きつれと猶も其悪習の出んことを憂ひて心安からねは故(ことさら)に又之を訓ふるそかし
汝等軍人ゆめ此訓誡(をしう)を等フ(なおざり)にな思ひそ

右の5ヶ条は軍人たらんもの暫も忽(ゆるがせ)にすへからす
さて之を行はんには一の誠心(まごころ)こそ大切なれ
抑此5ヶ条は我軍人の精神にして一の誠心は又5ヶ条の精神なり心誠ならされは如何なる嘉言も善行も皆うはへの装飾(かざり)にて何の用にかは立つへき
心たに誠あれは何事も成るものそかし
況してや此5ヶ条は天地の公道人倫の常經(じょうけい)なり
行ひ易く守り易し
汝等軍人能く朕か訓に遵(したが)ひて此道を守り行ひ国に報ゆるの務を尽さは
日本国の蒼生挙(こぞ)りて之を悦ひなん
朕一人(いちにん)の懌(よろこび)のみならんや

明治15年1月4日

御名



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