06/24/04

名誉毀損・侮辱とは、(刑法7)

ここでいきなり法律の解説になりますが、名誉という概念が06/18/04「男の沽券・面子3(恥の文化・・・菊と刀1)格式とメンツの違い」のコラムで問題になりましたので、現行刑法での、名誉概念を紹介しておきましょう。
ところで、皆さんは、名誉毀損と侮辱の違いをご存知でしょうか?
「本当のことを言って何故悪いんだ?」と質問されることがあります。
「本当だから相手は余計怒るんだよ。」と説明しますが、大方の人は腑に落ちない感じです。
恥じをかくとは、真実が白日のもとにさらされることが本質です。
客観的評価と真実の能力とが乖離しているときに、その事実を公表されると、大変な被害になります。
恥をかくのです。
まだ腑に落ちない人のために刑法の条文を紹介しましょう。

刑法
(名誉毀損)
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

この条文でわかるように、死者を除いて真実か否かは問題ではないのです。
小さな子供が「アホ馬鹿間抜け!」と言っても誰も相手にしないのですが、権威のある機関が、「ある人の論文が捏造でした」と発表すれば致命的です。
真実だから却って深刻な事態になるからです。
名誉って何でしょう?
ある人や団体の社会的な評価が名誉というものでしょう。
従って名誉というものは客観的なものであり、名誉感情というのは、その人や団体が主観的に思っている評価である(団体に感情があるのか・・・?・・・侮辱罪は不成立かと言う問題があります)と刑法の教科書では書いてあります。
それにしても、本当のことを言ったら何故悪いのか?という疑問を持つ人が多いでしょう。
真実でも、公のために暴露したときには処罰されません。
私的に毀損するのがいけないのです。
あの人は、落第したという事実を公表するのは、プライバシイ侵害だけではなく、名誉毀損罪にあたる可能性があるのです。
プライバシイの概念と似ていますが、大雑把にいえば、プライバシイ権は、他人に自分の日常を知られたくない権利という程度の概念と考えておけば良いでしょう。
名誉毀損は、そのプライバシイ権の中でも、社会的地位が毀損されてしまうほどの重要なプライバシイといえるかもしれません。
プライバシイの侵害は、公共の利害にかかわらない限り止めておくべきだと言うことでしょう。

もう1度条文を見ましょう。

刑法
(公共の利害に関する場合の特例)
第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

3月頃だったと思いますが、田中真紀子前外相の娘さんのプライバシイ記事の差し止め問題が社会を騒がせました。
そこで問題となったのは、事実が真実かどうかではなく公共の利害にかかわるかどうかと言うことだったのです。
地裁、高裁ともに公共性はない点までは一致していて、事前差し止めまで認めるかどうか(回復しがたい損害が有るかどうか)で判断が分かれただけです。




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