06/03/03

婚姻制度 (1身専属的権利1)9

再び婚姻制度の歴史に戻りましょう。
「婚姻制度 4」の続きです。
婚姻制度は「好き、嫌い」の側面を持っていて第3者が代理する事さえ許されないほど、極端に私的な性格を持っていて、これを法学上は「1身専属的」なものと言い表わしています。
話しがそれますが、1身専属的権利に関して有名な慰藉料に関する判例が有って、面白い話しですので、この機会に紹介しておきましょう。
なお、慰藉料の説明を平成14年8月24日以降のコラムで連載していますので、併せて読み直してみて下さい。
慰藉料と言うのは、精神的苦痛に対する金銭賠償の事ですが、精神的苦痛による損害賠償請求するかどうかは、その被害者自身が表明するものであって、(1身専属的権利)第3者が代わって意思表示出来ないと言う考え方が通用していました。
そこで問題は、交通事故その他で即死(または直ぐ死亡)した場合の慰藉料がどうなるかが争われた事件です。
従来の学説や判例によると、被害者が「慰藉料請求したい」と言わない内に死んだ以上は、相続人は慰藉料を請求出来ない理屈です。
そこで困った裁判所は、たまたま、被害者が「残念無念」と言った点を捉えて生前に慰謝料請求の意思表示をしていたと認定したのです。
一旦請求した以上は、普通の金銭請求権になりますので、遺族はその財産を相続した。
だから相続人はその権利を裁判で請求出来ると言う理論構成になります。
結局、被害者の遺族による、慰藉料請求が認められました。
これが有名な「残念無念判例」ですが、結論には問題ないのですが、あまりにもおかしい理屈づけですので、学説の厳しい批判を受けていました。
それにどこか滑稽ですので、私のような記憶力の弱いものでも、未だに覚えていると言う訳です。
たまたま死に臨んで、「なんか悔しそうな事をむにゃむにゃと言ったか、言わないか」で、巨額の慰藉料が貰えたり貰えなかったりするのは不都合です。
ちなみに現在の慰藉料相場は、死亡事故で平均2400万円前後になりますよ。
そこで学者もいろいろ考えるようになって、(理論構成はいろいろです)早くから大方の結論は、残念だなどという意思表示をしていなくても、当然に相続人が損害賠償請求項目に、慰謝料を含めて請求出来る実務になっていましたが、判例変更になったのは、昭和42年11月1日の事でした。

 



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