05/31/08
優生保護法16(第3条の存在意義)
ところで、第3条の手術を受ける本人の同意と言っても、5月18日・・・2「優生保護法6(同意とは?)」前後で書いたように、精神病者の小康時には、同意と言っても本当だったかどうかのリスクがありますから、リスクを避けるためには発病前のときしか実際には断種手術を出来ないことになります。
優生手術と似た問題でロボトミーという前頭葉の一部を切り取る手術がアメリカ発の治療法として一時流行したことがありますが、わが国でも、この手術を本人の同意なく勝手にやられたという恨みで、担当医師が殺されるロボトミー殺人事件が起きています。
こうした事が起き易いので、同意に頼る手術はリスクが大きいのです。
リスク回避のためにこの3条での同意は発病前に限るとすれば、まだ一度も発病もしていないのに、「遺伝性精神病質」を患っているとどうやって、認定するのでしょうか?
癌であれ心臓病であれ、病気になる前に分かることはありえません。
本人が気づかなくとも、検査で病気になっていることが分かることがありますが、精神病か否かは、現在でも科学的な体温や血圧、血液検査、CT、MRI等で判明するものではなく、患者や家族の訴える症状・・これも客観データといえるかも知れませんが・・・主観的主張から判断しているのです。
そこまで行けば、むしろ悪性期ですから、このときの入院等の同意は別として、ロボトミーや優生手術の同意は危険です。
そのうえ、そもそも「遺伝性」と言う観念自体あやふやな観念です。
親(を通じて何代前からの遺伝子を承継することを含めて)から受けつがない物はないのですから、(体質・・ある分野の免疫力が弱い、あるいは強い、髪の毛の癖、顔の形その他声色まで含めてすべてが承継取得です)遺伝といえばすべて遺伝ですが、どの程度まで行けば遺伝性と言うのかすらはっきりしません。
その上に、対象となるのが特定の確定定義のある病名ではなく3条各号では「精神病質」という訳の分からない定義です。
(ただし、精神病名が特定されればいいのかと言うと、統合失調症の場合でも・・ICDー10などの診断基準があるといっても、客観データでは無く患者の訴えに頼るなど客観性が乏しい感じです)
このように第3条の定義は、不明瞭ですから、精神病質関係では、一般医師はこの条文を利用したことがないのではないでしょうか?
戦前の優生法では、これしかなかったので、この条項が核心でしたが、戦後の法律名が国民「優生法」から「優生」保護法へ変ったところで、その他に別表記載として対象が明確化され、審査制度も完備しました。
こうして精神病等に限っては、戦後の優生保護法においては、3条は意味の低い規定になっていたのですから、すべてを別表制にしても良かった筈です。
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