05/06/07
刑事処罰拡大の危険性5(法律の錯誤と罪刑法定主義)
法の錯誤については、5月4日・・・・・3「刑事処罰拡大の危険性3(法律の錯誤・処罰の限界1)」で紹介したとおり、解釈が間違っていたからと言って、過失ではなく故意の犯罪になってしまう原理です。
しかし、これからの複雑な時代には、法律の錯誤の刑法理論(一種の公式でしょう)は、理念的には自然犯と法定犯などの区別によって、適用場面を変えていく、理論の発達・・進化が要請されているのではないでしょうか?
単純化して言えば、人殺しや泥棒をして悪いとは知らなかったと言う法律の錯誤は許されませんが、技術的・・専門的な取り締まり法規に関しては、消費者にとっては分からないことだらけでも仕方がないのではないかと言う大雑把な意見です。
証券取引法に関しては、証券マンや、機関投資家や大手企業の関係部署・・総務部員などは詳しいでしょうが、不動産屋や、車販売のプロにとっては素人の世界です。
また証券取引に詳しい人も、宅地開発行為の基準などは知らないのが普通です。
実際には、法定犯と自然犯の正確な概念区別は難しいでしょうから、さしあたり、立法にあたっては、著作権法のような解釈の難しい分野では、それぞれの条文自体に刑事処罰の範囲を限定的に記述して行く工夫が必要です。
関係者には厳しく、無関係な消費者としての参入者には原則民事賠償だけにするなどの身分による区分けが必要でしょう。
あるいは、消費者には交通違反のように原則として,数回までは罰金刑でしか処罰しないようにして、4回目以降は公判請求(懲役刑)にする法律上の順序(現行は検察の運用です)を、決める必要があるかも知れません。
裁判してみなければ、著作権や特許権のように違反になるかどうか誰も分からない難しい法律を一杯作って、行為をした後に裁判してみて、その結果次第で、即有罪と言うのでは、予め国民に法を知らしめる罪刑法定主義の意義が没却されてしまいます。
憲法
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。このようにせっかく憲法で事前の法律が保障されているのに、素人どころか弁護士でも簡単に分からないような法律を一杯作って、結果的に違反になると即、刑事処罰されるのでは、国民は何を基準に行動したら良いのか困ってしまいます。
法律は分かり易くなければ、法治国家としての実質的意味がないでしょう。
関連ページリンク
©2002,
2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design
/ Maintained by Pear Computing LLC
