04/29/08

延命装置と診療報酬請求権1

医師が、メスを入れるのは傷害行為に当たるのですが、正当業務行為として違法性が阻却されることの逆張りとして、延命装置をはずすのが、正当業務行為になるかどうかは議論の余地があるでしょう。

元々は治療のために始めた行為ですから、治療の必要がなくなれば治療を中止してよいかの問題です。

これを契約の側面からチェックすれば、治療の必要がなくなった後の治療は治療ではないのですから、診療報酬を請求できない道理です。

こうした考え方は交通事故賠償では貫徹されていて、むち打ちなどの治療を続けていて、一定期間経過で治療効果がなくなると、損害保険会社は治療費の支払いを拒絶する仕組みです。

本人が痛い痛いといっても、(本当にまだ痛いとしてもの話です)治療とは改善・・治すのを目指す行為ですから、治療しても改善効果がなくなった時点で、痛み止めだけでは治療とは認められず症状固定としてしまうのです。

たとえば片腕切断した場合、その切断部分の出血を抑え化膿を防ぎ、先端にかさぶたが出来て新しい皮膚組織が出来て安定すれば、治療としては終わりであって、その後の時々の神経の痛みに対処するのは、もはや受傷に対する治療ではありません。

そこから先は、鞭打ちの場合で言えば、治療による改善効果は見込めないものの、肩こりや痺れが楽になるからと言って、医師にかかって温熱療法などしているのは、治療の必要がないのに患者が勝手に掛かっているという関係になるので、一定期間の様子を見たうえで、保険会社は支払いに応じません。

では、この段階からの医療行為の希望は、本来の治療請求ではないのですから、医師は、診療拒否しても医師法違反にはならないことになるのでしょうか。

ただし、上記は一応言ってみればと言うだけであって、治療による改善効果がなくとも、患者はさしあたりの痛みの緩和を求め、これに応える・・対症療法をするのも医療行為といえるでしょうから、特定疾患の治療と医療とは若干ズレル側面があるでしょう。

麻酔の効能と同じで、痛みを緩和すること自体でその痛みの原因になっている疾患を治せるわけではありませんが、消炎鎮痛によって他の疾患誘発を防ぐ効能もあるのです。

痛くて眠れないときに、この痛みを緩和して熟睡するだけでも、翌日の体調に大きな影響があることを考えても分かることです。

延命装置の問題は、もはや医学的に何の意味もない(・・苦痛緩和でもないのです)場合ですから、本人がそういう状態で「ひと」として生きていると言えるのか、そういう状態で場合によっては、何十年も維持するのが、人間の尊厳にとってどういう意味があるのかと言う問題です。

治療による改善が望めなくなって、一定期間経過でもはや改善の見込みがないといえるかどうかについて、医師の恣意を許さないためには、前々回紹介したように複数外部医師によるチェック体制の整備をすれば良いのですから、あとは国民のコンセンサスを形成する努力の問題でしょう。

上記のように、交通事故の支払い側では治療行為か否かの境界のチェックが厳しいのですが、これと同様に一般医療の場合も支払い側が厳しくチェックするようになればかなり前向きに進むはずです。

 

 



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