04/06/07

権利移転(民法193)意思主義3と危険負担1

買ったパンを引き渡されないうちに地震とかそこへ飛行機が落ちてきて家が崩れてパ ンをもらえなくなっても、パンの買主は代金を払わねばならないと言う危険負担の原 則が、この意思主義から生まれてくるのです。
あるいは、配送途中で貰い事故で牛や馬が死んでも、契約と同時に買主に所有権が移 転しているのだから、買主の負担・・代金を払わねばならないと言うのが、意思主義 の帰結です。
もちろん交通事故の相手方への損害賠償請求権は、牛や馬の所有者である買主に帰属 しますが、そんな権利を手に入れて裁判しているよりは、その売買契約がなかったこ とに出来た方が簡単です。
このように、どちらが危険(リスク)を負担するかと言う基準ですから、これを危険 負担の原則と言います。
ここでは条文だけ紹介し、危険負担の具体的な適用の場面については、別の機会に説 明しましょう。
534条の「債権者の負担」と言うのは、牛や馬を引き渡せと言う債権者・・買主と 読みかえればいいでしょう。

民法(債権者の危険負担)
第534条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合におい て、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷し たときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定によりその物が確定し た時から、前項の規定を適用する。

ここで説明したいことは、上記の条文で分かるように意思主義の帰結は、観念的過ぎ て実務的には、使いものならないような理論ですが、学者が後生大事にいろいろ議論 している状態です。
所有権移転のルールを意思主義にしたからといって、いきなり契約が守られるように なるのではなく、契約を守るようになるには、商道徳の普及・・商品交換社会の成熟 が必要でしょう。
今では、契約が守られる社会になっているのですが、これは意思主義の結果では有り ません。
意思主義とこれに基く危険負担の原則は、あまりにも擬制が強い・・観念的過ぎるの で、実際の取引では、契約時の特約で、
      「代金完済と引き換えに登記する、そのときに所有権が移転する」
と言う特約事項が印刷で入っているのが一般的です。
ですから、せっかく民法で決めた所有権移転に関する意思主義の原則も、実務上は全 く効果を失っているのです。
日本人は利口なので、昔から変な法律が中国から入ってきてもうまくイナして来まし たが、明治以降も和魂洋才で現実離れした大陸のドイツ観念論を何とかして来たので す。



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