04/05/07

権利移転(民法190)と信用(意思主義1)

「約束をまもれよ!」と言えない社会では、目の前でお金と品物を交換出来ない遠隔地での商取引に馴染みませんから、広域に交易が発達してきた近代社会には、そぐわない法思想です。
まして、物流が複雑化してくるとその流通期間中の権利(たとえば船荷証券や倉荷証券)でさえ売買の対象になってくる時代ですから、「現物取引以外には実効性がない」と言う社会思想では成り立たなくなるのです。
百人一首で有名な
       「ちぎりおきし させもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり」
は人事の話ですから、ま、今でも似たようなことでしょうが、商取引の分野まで約束違反があっても、嘆いているだけしかないのでは困ります。
交易社会以前には信用と言えば、資産・多くの所有権を保有していることだけが信用の基礎だったでしょうが、交易社会では約束(契約)を守る人物かどうかが信用の基礎になってきたのです。
まさに、所有権から債権の時代になってきたのです。
いわば、静的な農業(生産=保有)社会から商業(契約)社会への移行期に差し掛かっていたのが、明治維新ころの世界情勢でした。
農業社会においては、土地保有の大小が信用・地位の決め手ですが、商人にとって在庫が多いかどうかではなく、信用・・約束を守れるかどうかが第一の資産です。
土地や商品の所有者が、先にAにうる契約していても、後からBから気に入った購入条件が提出されると、Bに2重売りしても、先にBに渡してしまえばBとの契約が有効になる社会って、約束・・商道徳よりは結果重視社会と言うべきでしょう。
そこで、買主・・所有権の移転を受ける方の弱い立場を補完するために発達した法思想が、交換や売買の意思表示が合致した瞬間に所有権が移転すると言う意思主義と言うものです。
(もちろん、このような解説をしている本を読んだことがありませんので、私一人の思いつきです。いつも書くことですが、このコラムでの意見に亘る部分は、いつも私のおもいつきですので、そのつもりで御読みください)
世の中に流通している普通の意見は、ご自分で本を買って読まれればいくらでも手に入りますので、私は普通の意見を書いていません。
意思主義の法体系は、履行の前に「約束をした」と言う一点だけに現実的な効力を与えて、商取引を信用できるものにしようとする精神としてみることが出来るでしょう。
この意思主義の発明こそが、近代商取引を成立たせる思想的基礎になったのではないでしょうか?



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