04/04/07
権利移転と恩恵6(民法187)登記の公信力1
以上見てきたように、もともと財物の移転行為では、現に渡してしまうまでは、いくらでも翻意出来るのが原則だったのです。
包括的財産移転行為である相続に関しても、戦後の親族相族法の改正までは廃嫡・勘当制度がありましたし、中国の皇太子でも、皇帝が気に入らなくなればいつでも廃太子される運命でした。
ありとあらゆる分野で、持てるものがその財物を手放すまでは、どのような約束事があろうとも、その持ち主が最後の最後まで自由に出来るのを原則とする時代が長かったのです。
登記制度は、取引相手を信用するための公示制度であるというならば、むしろ登記に公信力を認める方が一貫するのですが、肝腎の公信力機能は認めないのです。
登記の公信力とは、登記の表示を信用して取り引きしたものは、法律上保護されると言う制度のことです。
たとえば、登記名義が何らかの事情・・・文書偽造などで真実の所有者から別の人の名義になっていた場合でも、それを信用して買った人は有効に所有権を取得できると言う仕組みのことです。
被害者が可哀想と言う人もいるでしょうが、偽造されるには結構内部関係の管理など落ち度のあることが多いのですから、何も知らないで買った人とどちらを保護すべきかは、どっこいどっこいと言うところでしょう。
結局は、転々と名義が変わっているときに元名義人、さらにはその前、その前と、何回も前までその名義人に確認しなければ、(何回まで確認すれば有効と言う限界がないのです)有効に所有権取得出来ない制度が良いか、原因の如何に拘わらず、登記を信用した方を保護するかの価値観の問題でしょう。
11/16/02「エネルギー不滅の法則(民法10)」ののコラムで書きましたが、公信力を認めると偽造されて所有権を失った元所有者が、偽造した者を相手に損害賠償請求することになります。
他方で、公信力を認めないと、お金だけ払って、土地を手に入れられなかった買主が被害者として偽造者相手に損害賠償をすることになります。
いずれにせよ、こうした事件が起きれば、所有権を得られなかった買主、または、土地を失った方が偽造者に損害賠償を求めることになるのですが、どちらが偽造者に損害賠償を求めるのが合理的かの問題です。
ニュースなどでは、犯罪集団が、大地主の家に忍び込んで印鑑や権利証を盗んで偽造するとようなことがあれば大騒ぎするので目を引きますが、こんなことは物語の世界であって、実際には万に一つもないでしょう・・・泥棒としてはそんなことをすると足がつくので、普通はしません。
我々が実際に経験している偽造事件の大半は、放蕩息子や会社経営の息子が資金繰りに困って親の印鑑や権利証を持ち出したと言うのが殆どです。
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