04/20/06

功利主義とは?(罪刑法定主義1)

前回のコラムで、功利的考えが農業社会では根付かなかったと書きましたが、この機会に、西洋で、功利主義哲学がいつころから勃興したかについてちょっとみ見ておきましょう。 
功利主義と言うと、何か打算ばかり行動するイメージでいただけないような印象を受ける方が多いと思いますが、実はこの考え方が、近代合理主義時代を切り開いたと言うか、近代合理主義時代になったから生まれた重要な思想なのです。
功利主義哲学が近代経済学や、法学の思考方法の基礎になっているのですから、現在を理解するのには、最も重要な概念と言えるでしょう。
現代の経済学者の研究論文の殆どが、合理的に行動する人間を前提にしていろいろな研究をしているのは周知のとおりです。
金利を上げれば預金する人が増え、下げれば商品を買う人が増えると言う前提で金融政策もおこな割れているのですが、これなどもその1例です。
1764年に出版されたベッカリア(C.Beccaria: 1738-1794)の
    「犯罪と刑罰」
が功利主義哲学の嚆矢とされ、ベッカリアの影響を受けたイギリスの哲学者ベンサム(J.Bentham: 1748-1833)が、この大成者とされています。
Utilitarianismに対し、功利主義と言う翻訳では、何となく打算ばかりの哲学のような印象ですが、これに反感を抱く明治の学者が、このような翻訳語を当てたのでしょう。
本質的には、合理的解決を求める人間理性に基礎を置く哲学ですから、打算と言えば言えないことはないですから、「功利主義」と訳しても全く意味が違うわけではないでしょうが、好意的訳語をあてれば、合理主義と言うべきでしょうか。
犯罪は何故起こるかについては、古今をとわず、重要なテーマでしたが、ベッカリアの主張は、               「人間は合理的利害得失を考えて行動するものである」
と言う前提を立てます。
犯罪に対する刑罰も、どのようなことをすれば、どのような処罰を受けるかと言うことを予め、分かるようにしておけば、自分のやろうとしている違反行為が、割に合わないことが分かって、思いとどまる筈だと言う考え方です。
この思想からは、是非弁別能力のない者の行為は、責任を問わないと言う原理も出来てくるのです。



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