04/17/04
戦後の農業政策3(農地解放と土地改良法1)
平成16年4月14日の「戦後の農業政策1(自作農創設特別措置法と土地改良法1)」のコラムで紹介しましたように、耕地整理する主体であった地主階級が、農地解放の結果いなくなってしまったのです。
自作農創設・農地解放の結果として、地主がいなくなったのですから、政策の変更と言う大袈裟なものでなくとも、放置しておくと農業近代化(規模拡大が近代化と言う思想の場合です)によるの担い手がなくなってしまいます。
しかも、戦後食糧増産の必要性が大きかったこともあって、地主がいなくなった以上は、国が肩入れするしかないと言うことになり、戦後は税金による土地改良法時代となったのです。
戦後の農業補助政策は、ここに始まるのです。
土地改良法を紹介しましょう。
まず、土地改良法施行法で、耕地整理法が廃止されます。
土地改良法施行法
公布:昭和24年6月6日法律第196号
施行:昭和24年8月4日
(耕地整理法の廃止)
第一条 耕地整理法(明治四十二年法律第三十号)は、廃止する。
その他、経過規定(継続中の組合事業の効果などの定め)の条文がありますが、省略します。せっかく、自作農を「急速に」創設しても、放置していると、また大地主が復活してしまいますので、4月1日に紹介した農地法で、売買を許可制にし、小作関係を目的とした売買が許可されないようになりました。
しかし、当時普遍的であった「耕地整理による規模拡大にしか農業の活路がない」と言う思想を前提とすると、土地の集約を禁止しているだけで零細農家の自助努力に待つのでは、4月14日「戦後の農業政策1(自作農創設特別措置法)」のコラムで耕地整理の問題点を書きましたように、農業は衰退しか考えられません。
そこで、民間有志任せだった明治以来の耕地整理法を廃止して、新しく国家が主体になる土地改良法を制定したのです。
戦後の改良法では、有志に任せず、国家が関心を持って、国家または、地方公共団体の費用で土地を改良すると言う思想に変わったのです。
このように法の精神が大きく変わるときは、細かい条文の改正でなく、新法にするのが普通です。
戦後は、農業については単なる産業の一つとして放任するのではなく、民主化の基礎として、もっと広く考えれば万国共通の健全な政治の基礎として認識し、積極的に公的資金を投入すると言う思想でした。
そうであるからには、国家が主体的に関与していくための理想が必要です。
第一条一項がその表明です。
この思想によって、後に紹介する農振法その他の各種法律によって、とめどもなく農業予算をつぎ込んできた結果、肩入れしすぎた批判が、渦巻くようになりました。
第2項は、平成に入って環境意識の高まりに併せて、農地は生産優先でなく環境保護にも配慮すると言う思想の追加です。
開発の抑制と言うよりも、農業の過保護批判に対し、農地は環境に役立っていると言う応援団的意味合いが強いかも知れません。
いずれにせよ、そのように宣明した以上は、本当に環境に配慮して農政を展開して欲しいものです。
第2章を見ると、改良法では民間の組合まかせではなく、国または市町村の改良事業として行われるようになったのが分るでしょう。
ちなみに、当時の農業近代化という意味は、アメリカの大規模農法をモデルとして、国土が狭いので少しでもこれに近づける、即ち1反歩単位を最小とした区画にする程度の意味だったように思います。
長くなりますが、土地改良法を紹介しましょう。
勿論 現役の法律ですよ。
土地改良法
昭和24・6・6・法律195号
第1章 総 則(目的及び原則)
第1条 この法律は、農用地の改良、開発、保全及び集団化に関する事業を適正かつ円滑に実施するために必要な事項を定めて、農業生産の基盤の整備及び開発を図り、もつて農業の生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする。
2 土地改良事業の施行に当たつては、その事業は、環境との調和に配慮しつつ、国土資源の総合的な開発及び保全に資するとともに国民経済の発展に適合するものでなければならない。
《改正》平13法082(定義)
第2条
この法律において「農用地」とは、耕作の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。
2 この法律において「土地改良事業」とは、この法律により行なう次に掲げる事業をいう。
1.農業用用排水施設、農業用道路その他農用地の保全又は利用上必要な施設(以下「土地改良施設」という。)の新設、管理、廃止又は変更(あわせて一の土地改良事業として施行することを相当とするものとして政令で定める要件に適合する2以上の土地改良施設の新設又は変更を一体とした事業及び土地改良施設の新設又は変更(当該2以上の土地改良施設の新設又は変更を一体とした事業を含む。)とこれにあわせて一の土地改良事業として施行することを相当とするものとして政令で定める要件に適合する次号の区画事理、第3号の農用地の造成その他農用地の改良又は保全のため必要な事業とを一体とした事業を含む。)
2.区画整理(土地の区画形質の変更の事業及び当該事業とこれに附帯して施行することを相当とする次号の農用地の造成の工事又は農用地の改良若しくは保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業をいう。)
3.農用地の造成(農用地以外の土地の農用地への地目変換又は農用地間における地目変換の事業(埋立て及び干拓を除く。)及び当該事業とこれに附帯して施行することを相当とする土地の区画形質の変更の工事その他農用地の改良又は保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業をいう。)
4.埋立て又は干拓
5.農用地又は土地改良施設の災害復旧
6.農用地に関する権利並びにその農用地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合
7.その他農用地の改良又は保全のため必要な事業
(土地改良事業に参加する資格)
第3条 土地改良事業に参加する資格を有する者は、その事業の施行に係る地域内にある土地についての左の各号のいずれかに該当する者とする。
1.農用地であつて所有権に基づき耕作又は養畜の業務の目的に供されるものについては、その所有者
2.農用地であつて所有権以外の権原に基づき耕作又は養畜の業務の目的に供されるものについては、政令の定めるところにより、農業委員会(農業委員会等に関する法律(昭和26年法律第88号)第3条第1項ただし書又は第5項の規定により農業委員会を置かない市町村にあつては、市町村長。以下同じ。)に対しその所有者から当該土地改良事業に参加すべき旨の申出がありかつその申出が相当であつて農業委員会がこれを承認した場合にあつては、その所有者、その他の場合にあつては、その農用地につき当該権原に基づき耕作又は養畜の業務を営む者
3.農用地以外の土地であつて所有権に基づき使用及び収益の目的に供されるものについては、その所有者
4.農用地以外の土地であつて所有権以外の権原に基づき使用及び収益の目的に供されるものについては、その権原に基づき使用及び収益をする者が、政令の定めるところにより、その所有者の同意を得て農業委員会に対し当該土地改良事業に参加すべき旨を申し出た場合にあつては、その者、その他の場合にあつては、その所有者
《改正》平11法087
2 前項第2号の所有者及び権原に基づき耕作又は養畜の業務を営む者が、政令の定めるところにより、合意によつてその資格を交替すべき旨を農業委員会に申し出、かつ、その申出が相当であつて農業委員会がこれを承認したときは、その承認のあつた時にその資格が交替するものとする。同項第4号の所有者並びに権原に基づき使用及び収益をする者が、政令の定めるところにより、合意によつてその資格を交替すべき旨を農業委員会に申し出た場合も、また同様とする。
《改正》平11法087
3 前2項の規定の適用については、賃貸人又は貸主が、疾病その他農林水産省令で定める事由によつて当該農用地につき自ら耕作又は養畜の業務を営むことができないため、一時その農用地を他人に貸し付け、その耕作又は養畜の業務の目的に供した場合において、農業委員会が、政令の定めるところにより、その賃貸人又は貸主が近く自ら耕作又は養畜の業務を営むものと認め、かつ、これを相当と認めるときは、その賃貸人又は貸主をその農用地につき権原に基づき耕作又は養畜の業務を営む者とみなす。
第2章 土地改良事業第1節 土地改良区の行う土地改良事業 (第5条〜第84条)
第2節 国又は都道府県の行う土地改良事業 (第85条〜第94条の10)
第3節 農業協同組合等又は第3条に規定する資格を有する者の行う土地改良事業 (第95条〜第96条)
第4節 市町村の行う土地改良事業 (第96条の2〜第94条の4)
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