04/16/04

農地解放と農地法5(80条)(公文書の保存期間)

前回紹介した自作農創設特別措置法16条の、売渡の条文には思い出があります。
昭和50年代初めのことでしたが、農地解放・自作農創設特別措置法で買収された土地があって、そこへある私鉄の駅が移転してくることになり、その駅前広場になることが決まったのです。
元地主からの相談で、国(法務大臣)を相手に買戻しを求める裁判をして勝訴したことがありました。
裁判のテーマは、「すでに売り渡したかどうか」をめぐるものでしたが、裁判前の照会では、農林省だったか県だったか忘れましたが、「公文書の保存期間経過で分らないが、確か売り渡しているはずだ」という回答に終始していたのです。
裁判になると、驚いたことに次から次へと昭和21〜29年頃の黄ばんだ買収・売り渡し関係文書や調査記録などが提出されました。
役所は、保存期間経過と言う形で拒否回答してくることが多いのですが、実際上は存在することが多い一例です。
なお、私が審査委員として関与した事件では、保存期間経過後、廃棄処分決定までされたものの、実際に廃棄処分されずに存在していた文書が有りました。
情報開示を求められた役所は、記録を調べたところ廃棄処分決定がされていたので、不存在として処理したのですが、熱心な職員が念のためトラックに積み込む為に積み上げてある山の中から、要求された文書中、一部がまだトラックに積んでいないのを見つけ出してきたのです。
そこで、これは条例で定める「市の公文書」か否かの判断に困って、審査会の意見を求めることになったらしいのです。
 ちょうど薬害エイズの資料が厚生省にないと言い張っていたのが、現在の民主党党首、管直人氏が厚生大臣になった途端に資料の存在を明らかにして謝罪し、おおさわぎになっていた直後のときでした。
千葉市の審査会事件の決定書が、どの程度まで公開されているか分りませんが、概要書はマスコミ各社に配布し、当時大手新聞の全国版で報道されましたので、関心のある方は、インターネットで検策してごらんになってください。
話を事件に戻しますと、その土地を事実上耕作している人は、戦前からの小作人でしたが、農家適格(一定規模以上の耕作地・・・今では5反歩以上が多いようです)がないことから、売渡し要件に当てはまらず、有耶無耶になっていたことが分ったのです。
そこで買収した土地ではあるが、駅前広場になるのですから農地法第80条1項の「自作農の創設又は農業上の利用の増進の目的に供しないこと」になった土地として、次の第2項の条文に該当し、元地主が買い戻せることになったのです。
まだ弁護士になって4〜5年の若手の頃でしたから、依頼者から、「法務大臣相手の裁判で勝った」(誰相手でも勝つ事件は勝つし、負ける事件は負けるしかないのですが・・・)と言って、以来大変信頼してくれています。
古い法律は関係ないように思うでしょうが、こうして突然意味を持つことがあるのです。
もう一度農地法を見ておきましょう。

農地法
(売払)
第80条 
農林水産大臣は、第78条第1項の規定により管理する土地、立木、工作物又は権利について、政令で定めるところにより、自作農の創設又は農業上の利用の増進の目的に供しないことを相当と認めたときは、農林水産省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。
《改正》平11法160
2 農林水産大臣は、前項の規定により売り払い、又は所管換若しくは所属替をすることができる土地、立木、工作物又は権利が第9条、第14条又は第44条の規定により買収したものであるときは、政令で定める場合を除き、その土地、立木、工作物又は権利を、その買収前の所有者又はその一般承継人に売り払わなければならない。」




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