04/06/04

農地規制3(都会人は農民の心?・・・囲い込みの有無)

農地規制の流れを見ると、「農地売買や、利用の規制は、封建制度とは関係なく体制維持の共通原則であった」と言うのが、私の前回のコラムでの結論です。
現在でも政治家は、急激な変化に対応しなければならないと口先では言いますが、政権を取ってしまえば既得権者ですから、支持母体の喪失に繋がる変化は望まないものです。
産業革命後は、農業以外の産業が重要になったとは言っても、長い間農業従事者は、人口の大多数を占めて来ましたし、囲い込みのなかった我が国では、2、3男を都会に放出して来たので、今でも、兄弟、父母ないし伯父伯母、祖父母が農業関係者と言う家庭はかなり多いでしょう。
囲い込みのあったイギリスやその他の西洋諸国は、農民は根こそぎ追い出されましたので、日本のような都会人と農民のつながりは、少ないようですが、責任のある政治家としては、歴史始まって以来人類生存の根幹であった農業をいきなり無視する政策をとることはできません。
現に永年の与党である自民党は、(あるいは世界中の現実政治家は)農家を支持基盤にして来ているのは、現実政治としては、(彼等の好む言葉は、責任政党です)当然と言うところでしょう。
我が国の革新政党は、これからは労働者の方が人口が多くなるのだからと言う観念論でやってきたようです。
しかし、マルクス経済学は、囲い込み(エンクロージャームーブメント)によって地方から完全に縁の切れてしまった特殊イギリス労働者にのみあてはまるモデルを前提にして、大英図書館で考えたものでしかありませんので、そもそも我が国に当てはめるのは無理なのです。
経済発展の理論(マルクス史観)もドイツその他の僅かな地域の観察によるのですから、その世界だけに妥当するものでしかないことは、今ではマックスウエーバー以来経済学または政治学・歴史学の常識でしょう。
我が国では、前記のように西洋諸国とは都会人の成り立ちが違うのですから、農民を無視して「労働者大衆」ばかりを支持基盤にしようとしてもうまく行きません。
ちなみに学者が好んで使う用語に、「特殊日本的・・・・」と言う表現がありますが、家族が田舎に残っているのは、特殊日本的ではありません。
東南アジアその他の出稼ぎ農民は、殆どみんな故郷へ送金しているのです。
エンクロージャーで追い出され、無一文で労働者になり、田舎と縁の切れてしまった都会労働者の方が、世界的に見れば「特殊イギリス的」と言うべきです。 
都会人の多くは、なお農民の心で生きているのです。
また別の角度から見ると、牧畜文明と稲作文明とは世界観・宗教まで違うのだと言う意見すらある程ですから、農業は、各国が固有に発展させて来た文化の根源とも言えます。
自由貿易が良いとは分かっていても、世界各国内の農業保護政策が強固なのは、農業のあり方は、民族のアイデンテイテイーでもあるのですから仕方ない面があるでしょう。
   「これからの時代は、世界中が英語で統一すれば便利だ。」
と言われても、直ぐ日本語をやめられないのと同じくらいに、民族固有の農業政策は重みがあるのではないでしょうか?




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