04/06/02

詐欺の被害者は?  

社員の使い込みに遭ったので、警察に相談しているが、全然やってくれない、なんの為に税金を払ってるのか腹が立つ。と大変立腹した人が相談に来ました。 使い込みの内容を聞くと、うちでは営業マンの集金を禁止しているのに、営業マンが、無断で何軒も、集金して歩いて、10ヶ月前に辞めてしまった。直ぐ警察に行ったが、警察は、『集金先の客から被害届が出たらやってやる。』と偉そうに言うのが許せない。と言う。 『お客さんにそんな事頼める訳がないでしょう。』と憤懣やる方ない顔つきで訴えまくっている。 彼は、自分が被害者なのに、何故お客さまが被害者になるのか納得行かないらしい。 多分、このコラムの大部分の読者も納得しないと思いますので、今日は、詐欺と横領、刑事と民事の違い等を説明しましょう。 相談者は、先ず、自分は、社員に使い込まれた、と言って相談が始まりました。 『使い込み』と言うのは、刑事で言うと横領に当たる言葉ですが、横領と言うのは、社員が会社の為にお金を預かっている間に、自分の為に使ったり隠したりする場合です。 彼の説明では、その社員に集金を禁じていたのですから、その社員は、会社の為に集金に行ったのではなく、自分の懐に入れる為に行ったのですから、横領は成立しようがないのです。 『集金させたら使い込まれた。』と言う話なら簡単だったけどなあ、と私はため息をつきました。 やはり、騙されたのは、お客じゃないの?と、言っても『いや、私が被害者』と言う信念は簡単に揺るがない様です。 『お客さんにもう一度お金を払って下さいと、言えませんよ。』と言う事が、彼を被害者意識に駆り立てているのです。 ここで、次のような例え話をしてみました。 泥棒が、預金通帳と銀行印を盗んで、銀行から100万円を払い戻した場合には、窃盗罪は、100万円ではなく、通 帳と印鑑だけです。 泥棒が、通帳の名義人に成り済まして(窃盗の被害者を騙したのではない。)100万円の払い戻しを受けたのは、銀行に対する詐欺罪なのですよ。(有印私文書偽造・行使罪はこの場合関係ないので触れない) あなたの場合は、お客様が正規の集金と騙されて払ってしまったのでしょう。だからお客様が詐欺の被害者になるんです。(全く納得しない。) 通帳を盗まれた人は、詐欺の被害者ではなく、本来ならば、自分が払い戻し請求をしていないのだから、まだ預金が、100万円残っていると主張できるし、あなたも本来ならもう一度請求できます。 しかし、預金契約には、、通帳と届出印を使った払い戻し請求があった時に、特別不審な事がない限り、銀行が泥棒に払っても、その支払いを本人に払った事にできる。と言う約定があるので、(準占有者に対する弁済と言う原理があって、約定がなくても結果 は変わらないでしょう)結局泥棒の被害者は、100万円の預金がなくなってしまうし、あなたも別 の原理ですがもう一度払って下さいと言う事は、できません。(だからやっぱり被害者ジャン、と言う顔) 窃盗の被害者が100万円の損をしたのは、100万円を、詐取されたからではなく、銀行が詐取された時に、自分が損を引き受ける契約をしていたからその契約によって損をしているだけなのです。 あなたがお客様に『もう一度払って下さい。』と言えないのは、別の原理ですがまあ同じ事です。 そこで、同じ被害でも、民事の被害を警察は扱わない事は、皆さんも御存じでしょうが、民事と刑事の違いに付いて一つの例を言いますと、家に火をつけられた場合、火災保険を引き受けた会社は、損をしますが、保険会社の損害は、民事上の損害ですので、刑事の被害者とはならないのです。(少し納得?) 更に説明を続けます。 あなたの娘さんが、電車で通学定期を掏られたら、次の定期を買う為に娘さんにお金をやるしかないでしょう。 その事件の被害者は、あなたですか?被害届けは、あなたが付いて行くとしても、娘さんがするものなのでしょう。 あなたの損害は、民事の問題だと言う事が分かりましたか?(ようやく納得した様子。) やっと警察が税金泥棒でない事は分かりましたが、保険会社の場合、保険金支払いにあたっては、事故証明を求めるなど、原則として警察の関与を求めます。 相談者の場合、『警察へ被害届を出して下さい。』と、お客さまに頼む事さえできない弱い立場です。 このあとが、本当の法律相談ですが、コラムでの話はここまでとしましょう。




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