03/15/04
幕府概念の破綻6
ものごとには、生成・発展・消滅があります。
幕府概念を措定すると、幕府は何時成立したのかが問題となります。
学問というのは、そう言う面倒くさいものです。
征夷大将軍の政権を幕府と言うならば、将軍になった時を幕府成立時とすれば簡単です。
そう言う単純な論理の結果だったのか、私などは学校教育では、鎌倉幕府成立=1192年の将軍宣下のときと覚えこまされて大学受験したものです。
しかし、武家・軍事政権の本質は、実力支配ですから、将軍叙任・宣下だけで成立するわけでは有りません。
坂の上の田村麻呂が、征夷大将軍に任じられたけれども幕府を開いてはいないのです。
この1事を見ても、将軍宣下のときを幕府成立時と決めるのは、無理があるのが分るでしょう。
徳川政権の樹立は、関が原の合戦があったのでかなりハッキリしていますが、鎌倉幕府はご存知のとおり、徐々に出来上がったものですから何時出来たことになるのかが議論の対象になってきます。
以前の蒙古襲来のコラムおよび02/03/04「吉宗以降の改革とフランス革命 」でも書きましたが、その時点(鎌倉幕府の崩壊直前です)でやっと公家の荘園警護の武士・青侍にまで、応援してもらう為に鎌倉の指揮下に入れたに過ぎません。
さすがに、このときまで幕府成立がなかったという説はないようですが、当時「幕府を開く」と言う明確な考えもなく、(明治になって言い出したことですから当たり前です。)ずるずると少しづつ権力が鎌倉に移って行っただけですから、どの時点で幕府と言えるのかの定説が未だにないのです。(5段階のうちどれかの争いがあるのです。)
学校では、頼朝が征夷大将軍に任じられたときである建久3年・1192に幕府開設と習いましたが、その頃はまだ理論よりは、明治政権による有無を言わせぬ思想が強かったのでしょう。
牧英正外編の日本法制史(1993年初版第1刷発行・・1998年・・第八刷発行)115ページには、最近ではこの説(1192年)を取る学者は殆どいないと書いてあります。
理由は書いていませんが、私の素人考えと同様に「将軍宣下と幕府成立とは自動的な関係がない」と言うのが、現在の学説なのでしょう。
そうなって来ると、何のために「幕府」という概念が必要なのかが問題になって来るべきでしょう。
鎌倉政権、足利政権は、何時成立したかという直截のテーマで足りるはずです。
もともと、命じられて軍政(幕政)を始めたのではないのですから、前記のとおり、「・・・将軍を命じる」というのと幕政=軍政を始めるのとは概念が違うのです。
将軍がいつも軍事政権を樹立するわけでは有りませんし、逆に軍事政権がいつも将軍でなければならない必然性もありません。
「将軍宣下のときを以って幕府開設」という私の高校か中学時代の教科書の基礎になっていた学説は、アンチョコ過ぎて無理があります。
その頃は、戦後まだ15年前後ですから、理論よりは明治政権の思想を鵜のみにして教育していたのでしょう。(現在の教科書はどうかな?)
秀吉は言うまでもないですが、家康も将軍宣下まで、政治をしないで待っていたのではないのです。
歴代の総理が、たまたま将棋が好きで、就任後将棋連盟から必ず名誉何段の段位を貰っていたとしても、(これをもらわないと総理になった気がしないという人がいたとしても、)将棋連盟が総理の任命権を持っていたり、総理の上位機関だったということにはなりません。
歴代総理が、就任後伊勢神宮参拝したりアメリカ詣でしているのも同じことでしょう。
法的な必須要件ではないのです。
軍事政権樹立後、朝廷から何らかの官位を貰っても貰わなくとも、一旦樹立した軍事政権は、その時点で樹立したことに変わりが有りません。
その後の伊勢神宮や靖国参拝、アメリカ詣でと同次元の問題であった(その方面の支持者獲得・箔付け)可能性があります。
明治期に新政府と徳川との違いを出す為に、単なる箔付けでしかなかった「将軍」を利用し、「幕府」と言うキーワードを使って朝廷の下位の政権形態を創作したのは、結局無理な話だったということになるでしょう。
明治維新から130年以上も経った今では、そうした格付けがいらなくなったことでもありますし、「幕府」って言う無理な概念もそのうち消えていくのかもしれませんね。
06/07/03「天皇機関説事件とは 1」以下の連載で紹介しましたが、美濃部達吉の天皇機関説事件と同じで、これからも、右翼が怖くて誰も言い出せないのかな?
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