02/02/05
立証責任の転換5と黙秘権1(憲法102)
被告人が何もしゃべらない以上は、自分が不利だ(過失がある)からだろうと言う推定は許されません。
黙秘していることを不利に扱うことは許されないからです。
勿論部分的に質問に答えられなくて、黙ってしまう場合は、黙秘権の問題ではなく、その前後の発言との関係で証拠として採用できます。
ここで問題にしているのは、完全黙秘の場合です。
憲法
第三十八条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】
1 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
憲法ではこれだけですが、この黙秘権を実質的に保障するために、黙秘を理由とする不利益推定の禁止が当然のこととされているのです。
交通事故などは、100%の人が何らかの事故態様の言い訳をしますので、これを利用してこじつけとも言えるほど強引に過失を認定してきたこれまでの運用は、有罪の推定があるような有様でしたから、立証責任が変わっても実際はそうは変わりません。
しかし、過失がないことを被告人側が積極的に主張立証しなければならないと言う法律が登場・法の建前の変更が有れば、その結果・影響は大きいですよ。
そうなれば黙秘権の侵害でないかという議論も出てきそうですが、黙秘権の侵害かどうかはどこまで主張、立証責任を転換するかによるのです。
ナイフで人の胸や首を切りつけたという客観事実を検察側で立証した以上は、被告人のほうで、それにもかかわらず、殺意がなかったと言ういい訳を・例えば「かくかく・・・・の事情でうっかりナイフが当たってしまったとか」過失または無過失を主張立証しない限り、殺意または過失致死を認定されても仕方ないと言う場合は、黙秘権を侵害していることにはならないでしょう。
しかし、例えば警察がともかく逮捕してしまえば、被告人が、「自分がナイフできりつけていない」と言うアリバイ=罪体(簡単に言えば客観的事実です。)の有無についてまで、被告人に主張、立証責任があるという法律に変えれば、どうでしょう?
何もかも、みんな被告人側で主張し、立証しない限り、一旦逮捕された者は全部有罪と言う法律がもしも出来たら、黙秘権があるといっても「言い訳しない限り有罪になってしまう」のですから、これは、黙秘権の侵害でしょう。
こうして考えて行くと、「黙秘権」とご大層に言われて、誰でも知っている概念ですが、実際の価値は政策的に主張・立証責任をどちらが、どこまで負担するかと言う決め方にかかってくることが分ります。
憲法の人権保障といっても下位の法律の定め方で、内容が実質的に変わる例の一つかもしれません。
著名な例では、国民主権と言っても選挙法で不公平な選挙方法を決めれば、実質空洞化するのと同じです。
刑事でも主張立証責任を憲法の精神に反して大きく動かせば、その法律が憲法違反をしているかどうかの問題になってくるのです。
関連ページリンク
稲垣法律事務所コラム内:刑法に関するコラム
関連ページリンク稲垣法律事務所コラム内:社会の高度化、教育に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:地方に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:明治に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:憲法に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:責任に関するコラム
©2002,
2003, 2004, 2005, 2006 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design
/ Maintained by Pear Computing LLC