02/04/04

江戸時代の相続制度 5(武家)(養子)民法118

忠臣蔵をちょっと書いたことから、例によって随分横道にそれましたが、再び江戸時代の相続法制に戻ります。
養子制度は、アメリカなどでは相続と全く切り離して気楽に外国から養子を受け入れているようですが、今でも我が国では、相続の重要な要素であることは誰も否定できないでしょう。
まして、新規領地穫得、新規財産獲得が原則として停滞していた江戸時代には、相続が最も重要な生産手段の獲得方法でしたから、養子の口があると言うこと自体大変ないい話しでした。
また藩や家にとっては、相続人がいないと関係者が失業してしまうのですから、後継ぎの確保が重要課題でした。
こうして、相続法制が厳重になって来れば来るほど、リスク回避のためには、養子制度が重要な役割を果たすことになります。
知行を召し上げたい方からすれば、相続を困難にする一環として養子制度に制限を加えたくなります。
こうして江戸時代には、養子制度は、相続を妨害したい方が制定するものですから、相続妨害政策と連動していたことになります。
養子がいないと浅野家みたいに断絶してしまいますので、断絶を防ぐ為に早くから養子を取っておけばいいかと言うと、幕府のほうでは、これを無制限に認めたのではせっかく相続法制を厳しくした意味がなくなります。
そこで、幼少時には養子を取るのは禁止していました。
養子と言うのは、親のない子供を育てる為にあるのだから「子供が子供を養えないだろう」と言う建前は、正しいですよね。
現在でも、未成年者が養子をとることができません。
民法を紹介しましょう。

民法

第1款 縁組の要件
「 第792条 成年に達した者は、養子をすることができる。

第800条 縁組の届出は、その縁組が第792条乃至前条の規定その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。
第2款 縁組の無効及び取消
 
第802条 縁組は左の場合に限り、無効とする。
1.人違その他の事由によつて当事者間に縁組をする意思がないとき。
2.当事者が縁組の届出をしないとき。
但し、その届出が第739条第2項に掲げる条件を欠くだけであるときは、縁組は、これがために、その効力を妨げられることがない。」

現行法では、未成年が養子を取ることを禁止はしていませんが、縁組は802条2項に記載のとおり、戸籍届をしてはじめて効力が生ずる仕組みです。
これを創設的届出と言い、これまで、婚姻の届出などでも説明してきました。
平成14年9月22日の「住所とは」のコラムで創設的届出と報告的届出の区別を説明しましたし、平成15年6月4日の婚姻制度12のコラムの前後で婚姻制度について連続して紹介しました。
未成年者が792条に違反して養子を取ろうとしても、800条で受け付けてもらえませんので、結果的に効力が生じないのです。
江戸時代の大名家の断絶を図る為に生まれてきたこの規定を、子供が子供を養うための養子を取る必要がないと言う建前だけを理解して、そのまま明治民法でも導入したのではないでしょうか?
ところが、明治どころか、今でさえも我が国では、親のいない子を養う為の養子ではなくて、後継ぎまたは、老後1人では寂しいなどの理由で養子を取るのが殆ど全部と言ってもいいくらいです。
民法制定時(どころか現在の法律の本でもそう言う解釈を学者が書いていますよ。)の「子供に養子の必要がないから禁止した」と言う建前論は、余りにも我が国の実情や養子制度の歴史を無視したものと言えるでしょう


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