01/29/06

嫡出否認制度1(民法150)嫡出推定

現行民法の嫡出否認の訴えの制度は、婚姻中妻が生んだ子は、その夫の承認のもとに産むのが普通ですから、原則として夫の子として扱うことを原則とする条文から始まります。
この嫡出否認制度は、否認制度と言う仕組みになっているために、夫が妻の浮気を知ったならば子の嫡出性を否認できるところに意味があるように誤解している人(学者)が多いと思います。
その考えによれば、本来は客観的事実ですから、何年過ぎても訴えられるはずですが、家庭の安定のために政策的に一年に制限しているだけだと言うことになるのでしょう。
しかし、真実を明らかにするために出来た制度ではなく、前回書いたように歴史をたどれば、一定期間、自分の子として扱っていれば、(夫婦の話し合いでやったこともあるでしょうが、そこまで立ち入らず)後で気に入らなくなったからと言って否認できなくなる・・・否認権を制限するための規定として存在意義があるのです。
それでは、子はどんなに親不孝をしてもよいのかと言う議論になりますので、子としては否認できないけれども、特別な場合は相続から排除出来る制度が用意されていました。(廃除と言います。)
先ず、嫡出推定の民法から紹介して行きましょう。

民法(嫡出の推定)
第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
《改正》平16法147
2  婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
《改正》平16法147

772条の嫡出推定は、条文だけ見れば、
     「夫婦間の子は、妻の浮気がない筈(と言う道徳)だから嫡出子と推定する」
と言う道徳的な意味だろうかと解釈する人が多いでしょう。
しかし、そう言う解釈は明治以降に政府が強制して来た窮屈な道徳に毒されているからであって、それまでは性風俗はかなり自由なものでしたから、そもそもそう言う前提では誰も考えていなかったのです。
明治までは、日本の性風俗がかなり自由であったことを、02/15/05 「武家の性道徳と庶民の道徳2(歌舞伎のダシ物)」前後のコラムで連載してきましたので「性風俗」としてサーチしてください。
自由な性風俗を前提としてこの条文は出来ているのですから、前回までのコラムで書いたように、
「他所の男との間の子でも、夫が認めているなら夫婦の子とする」と言う意味になるのです。
ここで、「推定する」と言う意味は、「見なす」のとは違い、推定を破る裁判を出来ると言う意味ですが、見なすまでしなかったのは、夫が知らないときもあるからでしょう。
それでも、先ず法で推定されていますので、立証責任が否認する方・・夫にあります。
「見なす」と「推定」の違いについては、05/14/03「素人(消費者)とプロ(業者)の違い(商人とは?)8」のコラムで、説明したことがあります。
今ではDNA鑑定などの方法もありますが、明治に民法を作ったころには、そういったものがありませんでしたから、妻の協力(自白)がない限り、実際に立証するのは、至難の業だったでしょう。
ABOの血液型だけですと,同じ血液型の人が多すぎて、違う場合が偶然にかかってくるのです。
それでも「推定する」と言う条文になっているのは、「滅多に否認させないぞ」と言う慣習法の存在があったからでしょう。



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