01/19/04
江戸時代の婚姻と相続制度 1
幕府では、儒教道徳を主張する割りには、女系は問題にしなかったようで、むしろ、婚姻奨励要因になっていたくらいです。
東福門院(秀忠の娘)の外孫が、血のつながりを理由に格式違いなのに家光の息子と縁組していますし、天璋院篤姫が、将軍家定に輿入れするに際しては、将軍家斉の正室が、島津家から出たことを理由にされています。
こうして男系だけが禁止だったのですから、大名同士ないし有力家臣の強固な結びつきの防止策及びお家断絶策に使っていたのではないかと私が思う理由です。
婚姻制度は、現在では、両性の意思が中心ですが、生活手段の殆どが相続財産であった時代には、婚姻と家の相続とは密接に関連して来ます。
江戸時代、とりわけ武士に関しては、一代で富を築く可能性が全くなくなった時代ですので、婚姻法制や養子縁組法制は、相続法制と連動していたのです。
そこで今回は、江戸時代の相続法制を見ておきましょう。
主従関係は、本来奉公に対する封禄であったものですから、死亡によって当然には、家禄の相続が出来る論理関係にはありません。
武士の家の相続は、家産は殆どなく(今のサラリーマンの多くは、持ち家政策によって自宅を所有していますが、武士は一種の社宅みたいな家に住んでいたのです。)封禄の相続こそがすべてと言っても良かったでしょう。
家名や祖先祭祀の相続を争うことがありますがでは、家名だけ相続しても家禄がついてこなければ食べていけないのですから、実際は大義名分でしかなかったのです。
封禄は本来個人の奉公能力を見込んで給付されたものですから、厳密には、家臣の死亡隠居によって、一旦回収され、相続人の忠誠心と奉公能力を確認のうえ、改めて再支給する関係でしかありません。
豊臣秀吉の軍師として有名な竹中半兵衛が死亡すると、その子供は、先祖代々領有していた領地は別として、秀吉から貰った領土はそのまま相続してはいません。
要するに能力次第の時代だったのです。
このように、本来は家臣側の権利として家禄の相続を要求できる性質のものではなかったのです。
世襲と相続の関係では、11/17/03[相続と世襲4債権3」でも説明しました。
主君は有能な家臣を選択したい観点から相続願いに対する許可権を家臣統制の有力手段と考え、家臣側では相続の完全保障の希望と言う利害の衝突がありました。
幕府と各藩でその沿革によって相続制度は大きな差がありましたが、反逆等がない限り慣例的に相続を保障してきたので、所定の手続きを経て、提出された相続願いは、許可されるのが当然と言う期待権が生じていました。
今の憲法で言うと裁判官の任期は10年ですが、再任されるのが当然と言う意識から再任拒否が社会問題になりますし、(宮元判事補問題)支配者層からすればこの再任拒否権をちらつかせて、思想統制したくなるようです。
ただし、これまでも書いていますが、家臣と言っても新規召抱え組み(ここでは譜代であっても働きよって主君から知行地を貰っていた場合を含みます。)と、もともと在地領主が、家臣団に組み込まれていった場合とでは、相続のありようが違うのは当然です。
こうした違いがあるからか、藩によっては、幼少で相続するときは、一定の年齢まで家禄を半分にするとか、奉公できない分を納めさせるとかしていたところもあるようです。
この期待権を世襲制度と言っていただけです。
ただし、これは譜代の士分だけであって、新参家臣や足軽中間等の徒士層は、原則として一代限りでした。
以前から書いていますが徳川期も時代が進むと家来を次々お払い箱(召し放ち)にして、必要に応じて臨時に雇い入れるのが流行っていましたが、こうした臨時雇いに相続権はもともとありませんし、彼らも当然期待していません。
今で言うと、正社員は定年までの終身雇用を期待していますが、パ−トはそういう期待をもっていないのと同じですね。
こうしてみると、昔の世襲の期待権と現在の終身雇用の期待権は似てますね。
これに対して、戦国時代から自分の領土を持って家臣層に組み込まれた譜代の家臣層にとっては、主君から領土を貰ったものではなく、元はと言えば、地域の有力者の旗揚げに協力する代わりに本領安堵してもらっただけですから、積極的な謀反・敵対行為がない限り、領地を取り上げられる筋合いではありません。
こうした国人・豪族出身者にとっては相続するのが当たり前だったのに対し、身一つで就職して、戦功によって知行地を貰ったものとは、違うのは当たり前と言えるでしょうから相続も区々だったわけです。
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