01/06/04

刑罰の種類7「公事方御定書5」非人手下

世の中、仕事が始まりましたので御正月のコラムもこの辺で終わりにして、再び、法律関連にもどります。
昨年末までに、非人の説明を終わりましたので、非人とはどういうものかお分かりいただけたと思います。
なお、毎回断りませんが、意見に亘る部分以外は、牧野英正氏外の日本法制史の受け売りが中心です。
「非人手下」の刑と言うのは、江戸では、非人に落とされて、頭の車善七の配下に編入されることになっていました。
ちなみに,江戸時代になって、身分は、士農工商と固定されるようになりましたが、この固定化によって、4階級からはみ出た階層、(雑芸能者・・・・座頭・瞽女・琵琶法師など)は、必要以上に貶められてしまったようです。
らい病者、各種障害者に対する差別に加え、えた、非人などの名称で呼ばれた被差別部落人との峻別が、強化されました。
こうしてみると、ライ予防法による長年にわたる人権侵害は、単なる厚生省の怠慢だけでなく、長い歴史があるのが分りますね。
法律による隔離はしなくなっても、先日(秋ころでしたか)熊本の温泉ホテルがライ病者の大会か何かの行事受け入れを、断ったことがニュースになっていました。
法律による差別がなくなったのは良いことですが、差別が起こってきた由来から考えて行かないと、実際は難しいと思わせられた事件でした。
ところで、江戸時代の身分の固定化が、社会の発展による新たな職種の出現を阻害する要因にもなっていたと言われています。
穢多と非人の違いは、えたは、病気の牛などの解体等に従事していましたが、非人の上位に位置し、その支配下においていたのです。
非人の種類としては、出自によるものと、(中世時代から存在していた被差別民)と、親類、本人の願いによるもの(と書いてあるのですが、そんなことがあるのかな?と思うでしょうが、今でいえば、自ら蒸発して、路上生活者になる人がいますよね。こうした仲間でしょうか?)と、この刑罰によるものとがありました。
公事方御定書では、相対死の未遂者(成功すれば、死んでいますから未遂しかありません)賭博犯、姉妹叔母姪との密通などの罪に対して「非人手下」の刑が命じられました。
姉妹叔母姪との密通など肉親間の性行為は「人でなし」ということでしょうが、本当は動物世界でもタブーですから「人でなし」では解決しないのです。
姉妹叔母姪との密通と言っても、条文の原文が引用されていないので正確にはわかりませんが、私の思うところでは、義理の関係の姉妹叔母姪ではないかと推測しています。
本当の姉妹との蜜通などは滅多にないどころか100%近くないのですから、こんなことを法律で禁止するまでもないのです。
法律の禁止と言うのは、世上一杯あるからこそ、規制すると言うもので、悪いことは何でも、禁止するものではありません。
牧野氏の本がたまたま我家に有ったために、基本的な参考にしていますが、この本は原文の引用がないのが多く、・・・何百もある巻末の参考論文にあたるべきでしょうが、私としては、その関係論文を買ったからと言って、原文があるとは限らないので、・・・とても買ってられません。
図書館に行って調べてまでこのコラムを書くのでは、仕事みたいになってしまいます。
それで、あちこちに「・・・と言われていたようです」の書き方になっていますのでご了承ください。
義理の関係者との性行為の禁令が生まれた背景を、次のコラムで(私の独自推測ですが、)考えてみたいと思っています。
非人手下の刑は、赦律によって、10年すれば、平民に戻ることが出来ました。
なお、この穢多、非人制度は、明治4年(1871)「穢多非人等ノ称被廃候条、自今身分職業共平民同様タルヘキ事」と言う太政官布告が出され、以来、この差別は法律上はなくなっています。
実際上の差別は、簡単にはなくなりませんので、部落開放問題として今でも問題になるわけです。
島崎藤村の名作「破戒」という小説は、この問題を取り上げたものです。
政治問題になると難しいもので、同じく原水爆反対の立場でも、原水禁と原水協が相容れないように、差別反対の目的は同じなのに、それぞれ運動体の論理があって、この問題に取り組む関東水平社などの団体が、藤村の作品に不満を持ったようで、その圧力かどうか分りませんが一時絶版になっていたようです。


今日の関連書籍 :




関連ページリンク
稲垣法律事務所コラム内:刑罰に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:江戸に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:刑法に関するコラム
稲垣法律事務所コラム内:歴史に関するコラム


コラムTOP

リンクを当コラムにはられる方はお読み下さい

©2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 稲垣法律事務所 ©弁護士 稲垣総一郎
Design / Maintained by Pear Computing LLC



ブログ
株式投資