01/29/03

刑事告訴(無修正主義の問題点4)

ここ何年か、刑事事件の被害者が、警察に相談しても受け付けて貰えず、そのうち殺されてしまったと言う事件があって警察への批判が高まりました。
我々弁護士も、被害者かの相談の結果、刑事告訴をした方が良い、と判断して警察に告訴状を持って行っても、なかなか受け付けて貰えません。
曰く証拠がない、もっと証拠を集めてくれと言うのですが、国民から見れば証拠を集めるのは警察の仕事ではないかと不満に感じます。
例えば、『手形割り引きを頼んで手形を預けたところ、その手形を預かった人が割り引き金を持って逃げてしまった』と言う場合で説明しますと、この場合、詐欺にもなる事がありますが、普通は横領罪です。
こういう場合、警察は、割り引き金を犯人がどこで使ったか明らかにしてくれないと、受け付けられないと言う事があります。
刑法の重要な概念に『実行の着手』と言うのが有り、横領罪の場合、犯人が自己使用した時を『着手』と見るのが堅い解釈となります。
もっと厳密には、『不法領得の意思を発現した時』が実行の着手があった時ですので、もっと前段階でも可能ですが、実際は現実に使った時を押さえるのが堅い運用とされています。
そこで、使った場所が横領行為の犯行場所になり、その場所が分からないと『うちの管轄かどうか分からない』と言う論法になるのです。
『ふざけんなよ、そんな事が被害者に分かる訳ないじゃないか』と啖呵を切りたくなるのは私だけでしょうか?
その他に微に入り細に亘り、証拠を要求されます。
その結果,よほどの事がないと受け付けないのです。
そこには、『自分達が犯罪を見つけるならいいが、民間から言われて仕事出来るか』と言う官尊民卑の基本的な考え方が根底に有るように思います。
そもそも、次のコラムで述べる検察官の起訴便宜主義と違って、警察は、告訴や被害届があればこれを受理して真摯に職務を遂行すべきなのです。
それなのに職務怠慢?をするためか受付そのものを拒否するのです。
警察は、受け付けて事件処理し、事件になるかならないかの判断は、検察官に任せるのが法の仕組みですが、鼻から受け付けないのですから、いくら電話で問い合わせられても、何にもやってなくても職務怠慢にならないと言うふらちな仕組みを作り上げています。
話は変わりますが、情報公開法関連の役所の対応も同じ発想で、『できるだけ書類を作らなければ良いんだろう』と言う感じですからなんの為の公開か分からなくなります。
誰が見ても非の打ちどころがないと言う所まで書類が完備してやっと受け付けるやり方は、警察に限らず、いろんな行政庁が作り上げた仕組みですので、一般民間人もそれに馴れてしまって、これが正しいと思う様です。
破産とか裁判で、もう裁判所で受理されたのかという問い合わせを頻りに受けて驚く事があります。
法律家から見れば、印紙等形式要件がそろっていれば、出せば受理されるに決まっていて、それが裁判所で認められるかどうかは後の事ですが、問い合わせてくる人は、受理されたかどうかばかり聞きたがるのには、驚かされます。
役所で受理されれば99%もう大丈夫と言う運用に慣らされているからでしょう。
こうした事例に接するたびに、いかに役所の受け付け姿勢が、日常的に不親切・不便なものであるか痛感する事があります。




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